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2014年7月28日 (月)

再び『妻は告白する』を見る

フィルムセンターの特集で同じ映画を2度見たのは初めてかもしれない。増村の『妻は告白する』を再び見て、1回目以上に心が乱れた。終盤、若尾文子がずぶ濡れの和服で川口浩が勤める会社に現れた時、本当にゾクッとした。

今回もう20本くらい増村を見てきたので、彼の映画の特徴がこの作品にも現れているのがよくわかる。

まず、男は会社の歯車で、2人の女の間で迷う。そのうち1人は情熱を全開させ、男はそちらを選んで破綻する。今回は婚約者の馬淵晴子と仕事で世話になる助教授の妻役の若尾。もちろん情熱は若尾。

愛の反対側にいつも金がある。若尾は生活が貧しかったために助教授と結婚し、夫が死ぬことで保険金500万円を手にする。

物語の根源に戦争の影がある。若尾は戦争で両親を亡くし、孤児だった。

強姦が重要な役割を果たす。若尾は結婚前に夫となる小沢栄太郎に強姦される。

男たちのほとんどはカリカチュア。若尾の夫役の小沢は典型的な封建的日本男児だし、川口の上司や同僚はまさに会社の歯車そのもの。

冒頭にカメラが回るショットが出てくる。このような映画の自己言及は『青空娘』の最初のカメラや『黒の試走車』のカメラなど多い。

そんな感じで見てゆくと、同じ年の『恋にいのちを』という凡作にも、いつかの同じ要素があることがわかる。

まず、主人公役の藤巻潤は、勤務する雑誌社の社長令嬢(富士真奈美)と料亭の娘(江波杏子)の間で迷う。もちろん最後に勝利するのは江波であることは、最初に出てきた瞬間のオーラから明らか。

藤巻に愛されないと思った江波は、雑誌社社長の愛人となって、250万円の高級アパートを買ってもらい、喫茶店を開くための300万円もねだる。やはり愛の対極にお金が出てくる。

藤巻の父は戦前のスパイで、雑誌社社長も戦前の陸軍参謀。プロット全体を戦争が覆う。麻薬を扱う中国人(神山繁がいい)の描き方に、反中国的なもの(「シナ人のお妾さんになるなんて」というセリフ)や反共的なものを感じたが、どうだろうか。

江波は中国人が雇ったチンピラに強姦されそうになり、藤巻に救われる。

全体にキレの悪い『恋にいのちを』は、江波杏子初出演というだけでも貴重だろう。彼女が木場のあたりで藤巻と草原に横たわるシーンはいい感じだ。藤巻は「あなたは捕まるが、そうしたら結婚しよう」とヘンなセリフを吐く。

増村の場合、何人もの脚本家が交代で書いているのに、いつも同じような設定や物語になるのはなぜだろうか。

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