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2014年8月20日 (水)

猛暑に効くホン・サンス

ホン・サンス監督の『ヘウォンの恋愛日記』を劇場で見た。私がこの監督の映画を最初に見たのはたぶん『アバンチュールはパリで』(08)だが、正直に言って全くピンと来なかった。韓国のロメールというが、一体どこがと思った。ところがだんだん良くなってゆく。

ホン・サンスが進化したのか、私が成長したのかわからないが、『3人のアンヌ』(12)には震えてしまった。そして昨秋にトロントで『ソニはご機嫌ななめ』を見て、舌を巻いた。現在、その『ソニ』と『ヘウォンの恋愛日記』の2本が公開中だ。

どちらも、男にもてる美人の大学生が主人公の物語。監督で大学教授の男を始めとして、男たちがその美人に翻弄されるのも同じ。『ソニ』を見たのはほぼ1年前だし英語字幕だったので記憶は確かでないが、『ヘウォン』の方が主人公により好感が持てる感じにできていると思った。

『ヘウォン』は、主人公ヘウォンの独白から始まる。あるいは書いている日記の言葉か。冒頭で外国人女性に道案内している様子が写るが、何とジェーン・バーキン。彼女と意気投合した後に、ヘウォンはカナダに移住する母と会う。

かつて不倫の関係だった大学教授を呼び出し、飲みに行くと同級生たちと一緒になる。その後ヘウォンは感じのいい中年男と知り合うかと思うと、また教授と再会する。

ヘウォンは素直に悩む。それ以上に男たちは苦悩する。それだけの話なのに、映画はユーモアに溢れ、人間の真実があちこちに露呈する。教授がカセットで、ベートベンの交響曲第七番の有名なフレーズを繰り返し聞くシーンの悲喜劇ぶりといったら。あちこちで登場人物の情感が発露し、立ちすくむ。

ヘウォンの何度も変わる赤や青の衣装と、時々出てくる不思議なズームを見ているうちに、何とも言えない爽やかな気分になった。最後に寝ているヘウォンの独白を聞きながら、これはすべて夢だったのではないかと思いたくなるほど、摩訶不思議な作品だ。ホン・サンスの映画は、この猛暑に実に効く。

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