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2014年8月29日 (金)

またベネチアに来てしまった:その(2)

私は通常1日に映画を2本見ることは少ない。疲れるし、それ以上に印象が薄くなるから。ところが国際映画祭に行くと、だいたい3本から5本を見る。今回のベネチアは、夜便で行ったので初日の11時前にホテルに着き、それから3本を見た。

最初に見たオリゾンティ部門のオープニング作品でマフマルバフ監督の「大統領」The Presidentについては昨日書いたが、改めて考えてみるとかなりの傑作だったと思う。冒頭の民衆蜂起から空港閉鎖までの場面は迫力があるし、変装してギターを持って孫と逃げる大統領の姿はもの悲しくていい感じだ。

次に見たのは、監督週間のオープニング作品でキム・ギドク監督の「ワン・オン・ワン」One on one。これはある少女の強姦事件に係った男たちを、ある男が次々にリンチを加えると言う内容。ありとあらゆる拷問手段を通じてのリンチの連続に、ちょっとうんざりした。そもそもリンチをする男の動機がわからないし。キム・ギドクは私には昔からどこかピンと来ない。

3本目は、ジョシュア・オッペンハイマー監督のコンペ作品「沈黙の見え方」Look of Silence。これは今年の春に日本でも公開された『アクト・オブ・キリング』の監督の新作だが、いわば続編に近い。今回は兄ラムリを政府軍に殺された42代の男アディを追いかける。

つまり加害者ではなく、被害者の視点で語る。彼は兄を殺した男たちがその様子を得意そうに語るのをビデオで見る。そしてその男たちに会いに行く。復讐や糾弾のためではなく、あくまで真実を知るために。しかしかつての虐殺者たちは顔をしかめ、そんなことをしていると危ないぞと逆に脅す。

ビデオを見たり、実際に会ったりする時の、アディの静かな表情が印象的だ。彼は眼鏡屋らしく、かつての虐殺者たちにも眼鏡を作ってあげる。そして年老いた彼の両親はユーモアたっぷりだが、殺された息子のことは決して忘れない。彼の妻は夫の身を心配する。

この映画は、前作で殺人者達をある意味で英雄にしてしまった監督が、全く反対の立場から描いたものだ。映像は前作に比べて繊細だし、アメリカのテレビ映像(実は米国から資金が提供されていた)なども興味深い。個人的にはこちらの方が好きだ。

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