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2014年8月 2日 (土)

大森立嗣の才能

2010年代で最も多様な才能を見せている映画監督は、大森立嗣ではないだろうか。10月18日公開の『まほろ駅前狂想曲』を見て、そんなことを考えた。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(10)、『まほろ駅前多田便利軒』(11)、『ぼっちゃん』(13)から『さよなら渓谷』(13)へ。

映画ごとに雰囲気は全く異なるが、固定ショットでじっくり人物を捉える視線の強さは変わらない。そこから作品ごとのテイストが生まれてくる。

今回は前作と同じく、ゆるい感じで進む喜劇。瑛太の営む便利屋に、高校時代の友人である松田龍平がやってくる。いろんな依頼に応えているうちに事件に巻き込まれるというのも前回と同じ。

今回の依頼は、一か月半子供を預かってくれというものと、無農薬野菜を作る団体が実は農薬を使っている証拠写真を撮ってくれというものと、バスが間引き運転をしていないか調査してくれというもの。

登場人物も俳優もほぼ全員が前作に出ているので、どれが前作からあったネタかわからないが(そのうえ私が見ていないテレビシリーズもある)、それらの依頼が1つの物語の流れを作り、クライマックスの銃撃戦(?)に至る。

前半は便利軒の室内、後半はバスの中が中心で、固定ショットの長回しで、不思議な時間の経過を見せてゆく。その奥には、女性同士のカップルが子供を持つ話や、新興宗教団体が無農薬野菜作りの集団に代わる歴史や、暇な老人たちの反乱といった、極めて現代的な問題が潜んでいる。

とりわけ主人公の松田龍平が小さい頃は親と共に新興宗教団体にいて、その団体の代表の息子で今は無農薬野菜作りを推進する代表の男(永瀬正敏)と再会をするという設定がうまい。これは前作になかった要素だが、過去を背負うような永瀬のたたずまいがいい。

瑛太も松田も実際にそういう生活をしているのではないかと思わせるほど、日常感を漂わせている。脇役で光る高良健吾、松尾スズキ、大森南朋、岸部一徳、本上まなみ達は前作に出ていたと思うが、短い登場でも嬉しくなる。前作を見ていても見ていなくてもそれなりに楽しめる、巧みな作りの娯楽映画。

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