« 学生がひどく講義できません | トップページ | 大森立嗣の才能 »

2014年8月 1日 (金)

男性中心の増村3本

最近、増村保造について書き過ぎだと友人に言われた。フィルムセンターに行く時間のない人間にとっては、おもしろくないと。配給会社の方からは、フィルムセンターばかり行かずに新作の試写を見てくれと言われる。そこで今回は3本まとめて書くのでお許しを。

増村と言えば、若尾文子を始めとする女性の存在感が圧倒的だが、女性があまり活躍しない映画も多い。最近見た映画だと『偽大学生』(60)、『黒の報告書』(63)、『陸軍中野学校』(66)。

『偽大学生』は、ジェリー藤尾が東大受験に4回失敗して偽大学生として東大に通う顛末を描く。偶然に学生運動に加わるが、逮捕されたことから偽大学生であることがばれて、スパイとして東大生に監禁される。ようやく抜け出すが、今度は学生運動家たちの監禁事件を摘発したい警察に監禁される。

大江健三郎の短編が原作というが、いかにも大江らしい不条理劇を、サスペンス溢れる群像劇に仕立てた脚本と演出は見事というほかはない。ジェリー藤尾の人が良くて軽い感じが生きている。運動家トップの伊丹一三(十三)も何を考えているかわからない感じでいい。

この映画の唯一の女性は東大生の若尾文子だが、あまり似合っていない。活動家たちに疑問を抱きながらも従う役は彼女らしくない。その父親の元教授役の中村伸郎がいい味を出している。

終盤、偽大学生の田舎の母親が出てくるあたりも古い日本を見せる増村らしいし、警察との衝突の場面に回るカメラの存在も彼らしい。「そんなに日本がいやならフランスへでも行ったらいいじゃないか」というセリフも。増村は基本的に学生運動を認めていないと思う。

『陸軍中野学校』は市川雷蔵を主演にしたスタイリッシュな映画。その人間離れした訓練の描写に惚れ惚れする。学校の上司を演じる加藤大介もいい味を出している。唯一の女性の小川真由美は雷蔵の恋人役だが、結局アメリカ人スパイの手助けをして雷蔵自身に殺されるという悲しい結末。

日本の陸軍をかくも美しく描く増村は、戦後社会よりも戦前の日本を理想化している部分があったに違いない。

『黒の報告書』は、『黒の試走車』につぐ「黒」シリーズで、ある殺人事件の検事と弁護士の戦いを描く。検事役の宇津井健よりも、弁護士の小沢栄太郎や犯人の神山繁の方が存在感があるので勝つのは目に見えているし、裁判劇が得意な増村にしてはキレがない。

例によって社長の愛人とか社長夫人の愛人などが混じり合ってくるが、女性たちがいとも簡単に小沢に乗せられるので、おもしろくない。これはシリーズものだし俳優陣を見ても、力が入っていないのはわかる。

そして増村は続く。

|

« 学生がひどく講義できません | トップページ | 大森立嗣の才能 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/60076633

この記事へのトラックバック一覧です: 男性中心の増村3本:

« 学生がひどく講義できません | トップページ | 大森立嗣の才能 »