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2014年8月 7日 (木)

ギョーム・ブラックの長編第1作

『女っ気なし』は、去年公開された1時間足らずのフランス映画の中編だが、その即興的な演出がヌーヴェル・ヴァーグ初期を思わせて、映画好きを唸らせた。そのギョーム・ブラック監督の長編第1作『やさしい人』が10月25日に公開されるというので、試写を見た。

主人公を演じるのは、『女っ気なし』やその前の短編『遭難者』と同じくヴァンサン・マケーニュ。小太りで少し禿げていて、そのうえ長髪の冴えない40前の独身男というのも、同じ設定。

さらに舞台となるのが誰も知らないフランスの地方都市というのも同じで、前回は北フランスのオルトという海岸の街だったが、今回はトネール(映画の原題になっている)というブルゴーニュ地方の小さな町。

同じような感じで今度は100分もどうやって持たせるのかと思ったら、これがいい意味で期待を裏切り、次の一手を見せた。まず映画は、ヴァンサン・マケーニュ演じるマクシムが、部屋のギターで曲を弾きながら作曲する場面から始まる。それが慣れた感じで、これまでの「取り柄のない男」ではなさそうだ。

実際、マクシムは彼の取材に来た地元情報誌のレポーターで20歳くらいの女性と知り合い、意気投合する。その過程で彼のコンサートを見たという中年男も現れ、マクシムは存在感を増す。若い娘とも関係ができ、このままハッピーエンドでは面白くないぞと思っていたら、映画は急展開を示す。

まず若い娘が同世代の元カレのサッカー選手とヨリを戻したのを知ったマクシムは、銃を手に入れて2人を追跡する。この監督にそんなアクションが撮れるのかと見ていて不安になったが、これが何とも爽やかな展開を見せてくれた。

さらに警察署の取り調べでも、何とも胸のすく結末が待っている。あくまでこの監督らしい、「純粋さ」や「真心」による解決で嬉しくなった。

主人公の父親役のベルナール・メネズが抜群にいい。ジャック・ロジエの『オルエットの方へ』などに出ていた俳優だが、かつての若い娘とのコモ湖への逃避行を語るシーンなどが印象に残った。今もインテリ風のおばさんを家に連れてくるし。息子との友情にも泣けてくる。

前作と同じく、少し白みがかった荒い映像で捉えた地方都市も良かった。雪に覆われた街並みや、雪が消えた時の赤茶けた屋根の連なりが目に心地よい。

主人公のコンサートに行った男の逃げた妻の話もそうだが、「モテなそうな中年男にもある小さなロマンス」というのが、この映画のテーマかもしれない。その意味で前作以上に映画好きの中年男達の心をくすぐりそうだ。こっそり誰にも言わずに、今年のベストワンにしたい。

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