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2014年8月17日 (日)

『マルタのことづけ』のちょっといい感じ

別に傑作だと言うこともないが、映画好きの友人に「ちょっといいよ」と言いたくなる映画がある。10月公開のメキシコ映画『マルタのことづけ』がそうで、メキシコのクラウディア・サント=リュス監督第1回長編という。91分間のメキシコの貧乏な家族の話だが、鑑賞後にはきっと心が温まる。

最初に暗い映像の中で、若い女性が起きて食事をして、職場のスーパーに向かう。帰宅後お腹が痛くなり、気がつくと病院。その隣には痩せた中年女性がいて、言葉を交わす。

最初のセリフが出るまで、たぶん10分ほど。それからいつの間にか若い女性クラウディアは、病院で会ったマルタの子供たちの中にいる。あるいはそれは回想か。マルタが家においでと言ったわけでもないのに、クラウディアはメイドのように子供たちの世話をしながら、職場に通う。

子供たちといっても一番上はマルタと同じくらいだし、次女は太っておしゃべり。その下に女の子と男の子。騒いでばかりいる家族を、カメラは長回しで追いかける。見ていて最初は戸惑ったが、クラウディアが彼らと親しくなるにつれて、いい感じになってゆく。

マルタはたぶんエイズで、子供たちも父親はバラバラ。みんなが彼女を愛し、最後まで付き添う。静かな時間が過ぎてゆき、だんだん暖かい空気が流れ出す。みんなで海水浴に行くシーンあたりから、画面から目が離せなくなった。最後にマルタは、子供たちとクラウディアに「ことづけ」をする。

クラウディアの救いようのない絶望的な孤独が、死を待つ母を取り囲む4人の子供たちによって、次第に和らいでゆく。その雰囲気を、アニエス・ゴダールの手持ちカメラがうまく写し取っている。考えてみたら、監督もカメラも俳優たちも(一番下の男の子以外)みな女性だった。女性ならではの繊細さというといかにも陳腐だけれど、普通の世の中の流れからはずれた人々の日常への優しい眼差しがある。

原題Los insolitos peces gato を直訳するとたぶん「驚異のなまずたち」だが、なぜか招き猫を入れた金魚が泳ぐ水槽にこの名前が貼ってある。これは何だろうか。プレス資料にも書いてなかった。そもそも招き猫は日本のものだと思うのだが、起源はメキシコだったりして。

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