« 子供向けでない子供の展覧会 | トップページ | カンゾーさんが亡くなった »

2014年8月22日 (金)

久々の増村を堪能

先週はフィルムセンターが休みだったので、久しぶりに増村の映画を見た。『でんきくらげ』(70)だったが、新作ばかり見ていた目には予想を上回るおもしろさだった。

いかにも大映末期のような題名なので、これまで見る気がしなかった。主演の渥美マリ自体がこの「軟体動物」シリーズで売り出していて、何だか場末の女の感じがしたし。

出だしは見ていてつらい。渥美が母(根岸明美)の愛人(玉川良一!)に犯されて、怒った母は愛人を殺してしまい、刑務所に入る。渥美は母の勤めていた場末のバーに勤め始めるが、ここからおもしろくなる。

渥美は自分を犯そうとするヤクザを警察に通報して蹴散らし、スカウト(川津祐介)に出会って銀座のバーに勤めだす。そこで人気者となった渥美は、ポーカーで負けたら寝るという新しいシステムを考えだし、大儲けをする。あげくにバーのオーナー(西村晃)の愛人となり、男の死後に巨額の遺産を手に入れる。

自分の体を利用して欲しいものを手に入れるために、渥美はどこでもすぐに下着姿になる。60年代の若尾文子の頃はまだ下着が大きくダサかったが、1970年になるとかなり今風で小さい。それから渥美はブラジャーを外して両腕で胸を隠すが、そこからいつも乳房が見え隠れする。

大映末期のエログロな感じが溢れているが、銀座のバーのスカウト兼マネージャー役の川津祐介と組んで、次々に金持ちを騙すあたりのテンポは抜群だ。とりわけオーナーの死後群がる遺族を元弁護士の川津が法律を駆使し追い出すシーンは、かつての田宮二郎のようにカッコいい。赤いセーターに革ジャンや白いシャツに紺のダブルジャケットがピッタリ。

ラストで渥美が川津と一緒にならずに、母と生きる孤独な道を選ぶのもさまになる。男たちから称賛されると「母のおかげ」と言うし、あくまで田舎出身の母を大事にする感じが、戦後日本の暗い部分を見せる。

予算がないのでセットを組まずにロケばかりのせいか、当時の東京が見られるのも楽しい。オーナーの住むマンションの屋上からの風景で六本木方面を見ているが、一戸建ての多いことに驚く。高層ビルやマンションは数えるほどしかない。近くに永田町のKitano Arms、遠くに六本木のIBMのビルが見えるので、マンションは九段か市ヶ谷あたりだろうか。

バーの客の1人と寝るのはホテル・オークラ。かつて増村の映画では「高級アパート」として「千代田アパート」などが出てきたが、この映画では「マンション」という言葉を使っていた。この嫌な言葉はこの頃からだろうか。渥美が川津と一度だけ寝る場面では、「モーテル」に行くが、そこには360度回転のベッドがあった。こういう装置もその頃からだろうか。

|

« 子供向けでない子供の展覧会 | トップページ | カンゾーさんが亡くなった »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/60189351

この記事へのトラックバック一覧です: 久々の増村を堪能:

« 子供向けでない子供の展覧会 | トップページ | カンゾーさんが亡くなった »