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2014年8月21日 (木)

子供向けでない子供の展覧会

夏になると、子供向けの展覧会をやる美術館が多い。中には都現美の「ワンダフル・ワールド展」のように、美術作家に頼んで子供向けの体験型、参加型の作品を作ってもらっている展示さえある。ところが森美術館で8月11日まで開催の『ゴー・ビトィーンズ展』は、およそ子供向きでない。

展覧会の副題は、「子どもを通して見る世界」であって、子供のための展覧会とはどこにも書いていない。都現美の展覧会が「「赤ちゃんから大人まで一緒に楽しめる展覧会」とチラシに書いてあったのは違う。こちらは子供の視線で見た作品を見ながら、大人が考える展覧会だろう。

実際、展覧会の最初に出てくるのは、19世紀末のニューヨークの街角の浮浪児や貧しい子供たちの写真だ。あるいは働かされる子供たちや第二次大戦中に強制収容所に入れられた日系人の子供たちの写真(これは宮武東洋)。現代中国の少女同士が愛し合うビデオ(菊池智子作)まで流されていて、乳母車のお母さんたちは、逃げるようにその前を過ぎて行った。

個人的に一番ドキリとしたのは、ジャン・オーという中国の作家の「パパとわたし」という写真シリーズ。中国では1990年代以降に外国へ子供を養子縁組に出すことが可能になって、多くの子供が養子としてアメリカに渡ったという。展示されているのは、白人のパパと中国の女の子が楽しそうに写る写真ばかりだが、なぜかグロテスクなものを感じざるを得なかった。

もちろんその裏には、中国の貧困があるだろうし、何らかの理由で子供ができなかったアメリカ人夫婦の思いもあるだろう。けれどあえて母親を排除して、おおむね脂ぎった白人中年男性がアジアの少女を着飾らせて抱いている写真は、見たくないものを見たような気分になった。そのほか、その女の子たちの将来とかいろいろなことを考えさせられた。

数年前に『冬の小鳥』という韓国映画の秀作があった。韓国の孤児院からフランスに養子縁組で渡った少女の物語だが、監督自身がその体験者だったはず。現在フランスでは、そうした元養子の韓国人から閣僚まで出ているけれども。

展覧会に戻ると、奈良美智やボルタンスキーやフィオナ・タン、塩田千春といった人気作家の小品を、国内の美術館や作家から借りてきてる部分は、いささか興醒めだった。彼らの作品ならばもっと空間を使ったちゃんとした展示を見たい。

しかしこのような子供向けでない子供の展覧会は興味深かった。夏休みのベビーカーや子連れのお母さんばかりの美術館は、個人的には苦手なので。

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