またベネチアに来てしまった:その(10)
コンペ以外にも面白い作品は多い。コンペ外招待部門のサビーナ・グッザンティ監督「結託」La trattativaは、マフィアとベルルスコーニがいかに結託しているかを語るドキュメンタリー。当時の映像や写真をベースに再現劇を加えているが、ベルルスコーニは監督本人が演じる。
今回見たマレスコの「ベルルスコーニ シチリアの物語」は2000年以降が主だが、こちらは1990年代を中心に語る。90年代前半のファルコーネ判事やボルサリーノ判事の暗殺以降、ベルルスコーニが政界に登場してからはマフィアの犯罪が激減するが、それはマフィアがベルルスコーニを支えたからだという。女性監督のグッザンティはもともとテレビでベルルスコーニの物まねをして茶化す番組で有名になった人だが、彼女は健在だった。
『トリノ、24時からの恋人たち』のダヴィデ・フェラーリオ監督のドキュメンタリー「悪魔のスープ」Zuppa del demonioは、1910年代から70年までの記録映像を使って、工場と人間の関係をじっくり見せる。もとになったのはいわゆる産業映画やPR映画だが、人間の機械文明へのあまりに楽観的な信頼に驚く。
とりわけフィアットやオリベッティが、いかにイタリアにとって大きかったのかよくわかる。映画は1911年のフィアットの昼休みの映像に始まって、1973年の石油危機で終わる。ムッソリーニがフィアット社を訪れた時の労働者たちの歓迎ぶりなど忘れがたい。
マノエル・デ・オリヴェイラの「ベレムの老人」The Old Man of Belemはわずか19分の短編だが、ドン・キホーテにまつわる話を、大きなセットや豪華な衣装を使って再現している。その正統的な映像の力を感じた。
監督週間部門のイヴァノ・デ・マテオ監督「私たちの子供たち」I nostri ragazziは、俳優たちに惹かれて見た。医者役のルイジ・ロ・カーショの奥さんがジョヴァンナ・メッゾジョルノ、その兄の弁護士役がアレッサンドロ・ガスマンで奥さんがバルボラ・ボブローヴァ。イタリア映画祭でお馴染みのメンバーだ。
恵まれた暮らしを送る彼らの子供たちが、老婆への暴行事件を起こしてしまう。その事実を知った親たちがどう対応するかが描かれるが、トレンディ・ドラマ調の演出だし、尻切れトンボな結末で残念。
オリゾンティ部門の「下品な生活」La vita oscenaはイタリアの若手監督レナート・デ・マリアの作品だが、あまりにつまらなくて15分で出た。今回、途中で出たのはこれ1本。かつて国際映画祭だと途中で出ることが時々あったが、自分ながら最近は減ったような気がする。
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