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2014年9月 7日 (日)

またベネチアに来てしまった:その(9)

もう受賞結果は発表済みだし、私自身も既にベネチアを離れているのだが、あと何回か続けたい。ロイ・アンダーソン監督の「枝に止まり、存在について考える鳩」A Pigeon Sat on a Branch Reflecting on Existence」は今回のコンペでは珍しくシュールな作品だった。

まるでエドワード・ホッパーの絵画のように、孤独な人々が立ち尽くすさまを、固定カメラでとらえる。ほとんど何もない空間で人々は間の抜けた会話を繰り返す。時おりかつての戦争を思い出させるような場面もある。主な登場人物は時代遅れのおもちゃを売る男を始めとして何人かいるが、名前もないし、多くはなぜか顔を白く塗っている。

笑えそうで笑えない、どう反応していいかわからない場面の連続で退屈と言えば退屈だが、その圧倒的な脱力感は相当に新しいスタイルだと思った。

コンペのもう1つのフランス映画は、アリックス・ドラポルト監督の「ハンマーの最後の一撃」Le dernier coup de marteau。体の弱い母と南仏モンペリエでトレーラーハウスで暮らす少年の話。同じくトレーラーで暮らすスペインの家族と仲良くなったり、自分を捨てた父親が指揮者として市内のコンサートホールにやってきたり。

多感な少年時代の日常を、繊細で丁寧に描いた秀作だが、一体何を言いたいのかという気もする。冒頭で少年が母と池に飛び込むと母親の髪がかつらだったことに驚き、少年がスペインの女友だちに突然髪を切ってもらったり、父親のリハーサルに立ち会ったりするシーンはどれもいいのだけれど。

コンペで『野火』と共にアジアから選ばれた中国映画「闖入者」(英語題はRed Amnesia)は、『北京の自転車』のワン・シャオシュアイ監督作品。夫を亡くした中年女性は、成長した子供2人を訪ねたり、自分の母を介護したりする単調な生活を繰り返しているが、ある時無言電話が来るようになった。それから自分の跡をつけてくる青年に出会う。

どこにでもいるような現代社会になじめない真面目な中年女性を描きながら、そこにサスペンスの要素を入れて、それが実は彼女の過去に繋がっているというもの。手堅い演出だし構成もうまいが、およそ刺激のない映画に見えた。刺青やゲイが出てくるのも含めて、中国はこんなに進んでますよ、といいたげな部分も気になる。


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