フィリピン映画はおもしろい
正直に言うと、アジアにはほとんど行ったことがない。避けているわけではないが、これまで仕事の都合でヨーロッパばかり行っていた。アジアは台湾と香港のみ。最近、フィリピン映画がおもしろいという話はよく聞く。
ブリランテ・メンドーサとかラヴ・ディアスとか、国際映画祭でも受賞が話題になっている。そんな時、教えている学生に10月25日公開のフィリピン映画『SHIFT 恋より強いミカタ』がおもしろいと聞いたので、試写を見に行った。
監督はシージ・レデスマという女性で、長編第1回作品という。これがなかなかいい感じの青春映画に仕上がっている。主人公の女性エステラは大学で社会学を学んだ後、写真家かミュージシャンを夢見ているが、実際は下請け会社のコールセンターで働いている。
彼女がそこで出会うトレヴァーはゲイだけれど、相性がよくて意気投合する。映画は、将来の見えない中でもがきながら生きてゆく彼女の毎日を追う。
髪を鮮やかな赤に染めたエステラが、抜群に魅力的だ。素直で爽やかだが意志の強い女性を演じている。後半、彼女が1人でギターを弾きながら歌うシーンには惚れ惚れした。冒頭とラストのアップが効いている。後でプレスシートを読んだら、フィリピンでは人気の歌手らしい。
彼女も友人のトレヴァーも絶えずパソコンやスマホでSNSをしたり、電話で話したりするが、SNSの文字や電話の相手の名前が絶えずスクリーンに写る。同時に何人もとのコミュニケーションをせわしなく行き来しながら、結局本音を言えない若者たち。これはもう世界共通だろう。
日本にはないと思ったのは、ゲイなどの存在が社会の表に出ていること。主人公が務める会社にはリーダー格の男も含めて、ゲイやレズが何人もいそうだ。結局お別れの会になってしまう創立パーティは、全員が反対の性の格好をするという決まりだ。
もう一つは英語の存在の大きさ。日常会話に英語が混じるが、会社ではリーダーや役員の話はすべて英語。ほかの国ではあまりない風景だ。アジアと言っても日本とは全く違う気がする。行ってみたくなった。
若い監督が、自らのヒリヒリするような体験や気持ちをそのまま映画にすることに成功している。見終わって、大阪アジアン映画祭のグランプリ作品と知った。
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