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2014年9月23日 (火)

『ニューヨークの巴里夫』に考えたこと

12月公開のセドリック・クラピッシュ監督『ニューヨークの巴里夫』を見た。またも正月映画。この監督の映画は、昔『猫が行方不明』(95)を見て、フランス映画もずいぶん身近というか、どうでもいい話をうまく物語るようになったなと思った記憶がある。

その後見たのは『PARIS』(07)のみか。実は『スパニッシュ・アパートメント』(01)も、『ロシアン・ドールズ』(04)も見ていないが、今回はその2本に続く続編という。

結果としては、前2作を見ていないくても十分におもしろかった。英国の女性と結婚したフランス人グザィエ(ロマン・デュリス)は子供が2人いて作家として活躍し始めているが、妻はニューヨーク出張中に恋人ができたので子供を連れてNYに住むという。夫は時々子供と会うためにNYに行き、そこにかつての友人たちが集まる。

フランス人が外国で住む話を同じ登場人物で続けるシリーズという点では、リチャード・リンクレーター監督がジュリー・デルピーとイーサン・ホークで描く「ビフォア」シリーズに近いかもしれない。しかしこちらは中心となるのはカップルではなく、ロマン・デュリスを中心として過去から現在までの女たちが集まるという点でよりフランス的だ。

主人公の独白が随所に入り、それは書いている小説らしく、編集者とのスカイプでの会話も挟み込まれる。その自分中心のナルシストぶりが気にはなるけれど、主人公もセシル・ド・フランスやオドレイ・トトゥもみんな40過ぎの三枚目に描かれていて、楽しくなる。

この映画を見て考えたのは、フランス人がNYで苦労する姿をコミカルに描くなんて、昔はなかったということ。アメリカ人を始めとして外国人がフランスで苦労する話はいくらでもあったのだが。ロマン・デュリスが妻の新しいアメリカ人の恋人を前にオドオドしている姿なんて、まるで昔の日本人みたい。

もう1つ思ったのは、中国だらけだったこと。レズのセシル・ドゥ・フランスの恋人は中国人だし、ロマン・デュリスが住むのは彼女に紹介してもらったチャイナ・タウンで、彼がビザのために偽装結婚する相手も中国人。オドレイ・トトゥがNYに仕事に来たのは、中国のお茶を扱う企業と交渉するため。

90年代ごろ、フランス映画にやたらに日本がでてきてうんざりしたが、今は中国である。考えてみたら、この映画の原題はCasse tete chinois(中国の難問=超難問=パズル)だった。

もう1つ。監督のブノワ・ジャコが、デュリスの父親役で忽然とNYに現れたのは驚いた。彼の新作「3つの心」をベネチアで見たばかりだったので。演じたのは、何も説明しないで去ってゆく謎の父親。考えてみたら、デュリスは部屋でグールド演奏のバッハのゴールドベルク協奏曲を聞いたり、ショウペンハウエルやヘーゲルが彼を訪ねてきたりと、ずいぶんスノッブな映画でもあった。

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