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2014年9月 2日 (火)

またベネチアに来てしまった:その(5)

今年のベネチアのコンペは、フランス映画が多過ぎる気がする。明らかにフランスの監督の作品だけで、コンペ20本のうち4本もある。ブノワ・ジャコの「3つの心」3 Coeursとダヴィッド・エルオーファンの「人間から離れて」Loin des hommesを見た。

「3つの心」は、「栄光の代償」でも主演のブノワ・ポールボルド演じるある税務署員が、地方出張に出かけて列車に乗り遅れたのがきっかけで女性と出会う話。最初にカフェで会ったシルヴィ―(シャルロット・ゲンズブール」とパリでの再会を誓うがうまくいかない。その後同じ町でソフィー(キアラ・マストロヤンニ)と出会って結婚するが、ある時彼女はシルヴィ―の妹だったことを知る。

この監督のこれまでの作品と同じく話の展開に無理があるが、細部の情感の表現はうまい。とりわけキアラ・マストロヤンニの姉への思いや出会った男を好きになる様子が何とも生々しい。2人の女の母親役のカトリーヌ・ドヌーヴも迫力満点。

グリフィスの『散りゆく花』やルノワールの『ゲームの規則』を思わせるシーンもある。それでも突然途中から出てくる「神の声」のようなナレーションやあまりにも自由過ぎる構成に、どうしても物語には入れない。

「人間から離れて」は、1954年のフランス植民地時代のアルジェリアを舞台に、1人のフランス人教師と偶然匿うアルジェリア人の友情を描くものでカミュが原作。先生を演じるのが製作にも名を連ねるヴィゴ・モーテンセンで、元軍人だが田舎の小学校でアルジェリアの子供たちに教えている。

アルジェリアの反乱軍が迫っている情報が入り、2人は家を離れて移動する。反乱軍に殺されそうになったり、フランス軍に捕まったり。いつ死んでもおかしくない状況を、硬質な画面で淡々と描くタッチが冴えている。フランス映画には珍しい何とも渋い歴史劇だが味わい深い。

同じくコンペで見たディヴィッド「マングルホーン」Manglehornは、アル・パチーノが無精ひげの頑固な鍵屋を演じる。客や銀行の受付の女やディスコの若者や息子との会話の中で、単調な日々を送る孤独な男の姿が浮かび上がる。時おり入るアル・パチーノの嗄れ声のナレーションもいい。今風の新しい文化を頑として受け付けない生き方に、何だか自分の老後を見るような気もしたが。

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