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2014年9月 5日 (金)

またベネチアに来てしまった:その(7)

今回の映画祭で一番期待していたのは、トルコ系ドイツ人のファティ・アキン監督の「カット」The Cut。最近は軽い作品が多いアキン監督だが、今回はオスマントルコによる第i一次世界大戦前後のアルメニア人虐殺を描いた重厚な歴史もの。

タハール・ラヒム演じるアルメニア人のナザレは妻や双子の娘を限りなく愛しているが、オスマントルコの兵隊に突然連行され、強制労働を強いられる。何度も殺されそうになりながら一命を取り留めるが、自分の町の人々が皆殺しにあったことを知る。ある時双子が生きている情報を得て、ナザレの旅が始まる。

トルコの各地から、レバノン、キューバ、そしてアメリカのミネアポリスと探し回るナザレは、刃物で殺されそうになった時に喉を傷めて声が出ない。言葉が話せない状態で果てしない大地を歩く姿に、見終わるとずっしりと重いものを感じて席が立てなかった。

アルメニア人虐殺に対するトルコ政府の立場は現在も微妙なので、この映画は今後物議を醸しそうだ。その意味でも賞に限りなく近い1本だろう。

コンペ外の招待作品でラース・フォン・トリヤーの「ニンフォマニアック第1章」Nymphomaniac Volume1長尺版・ディレクターズ・カットを見た。これは長尺版が今年のベルリンで初公開されているが、ベネチアでは第2章が公開されるのに合わせてディレクターズ・カットが上映された。

道路で暴行を受けて倒れていた女性ジョー(シャルロット・ゲンズブール)が助けてくれた男(ステラン・スカルスガルド)に自分の小さい頃からの性的な経験を話すというもの。ジョーは女友だちと2人で長距離列車の中でどのくらい男性と関係ができるか競争したり、あるいは無賃乗車で捕まるところを助けてもらった男を遮二無二誘惑したり。

一番おかしいのは、ジョーは毎日数人と関係を持っていた日々を整理しようとするが、ある中年男は勘違いをして妻と別れたと荷物を持ってやってくる。そこに現れるその男の妻子やジョーの若い恋人が加わって混乱の極みとなる。

あるいはジョーは父が危篤の時に、病院の職員と関係を持ち、父が死んだときに性的興奮を覚える。そこにスカルスゴルドが話すバッハの「われ汝を呼ぶ、主イエス・キリストよ」が流れて、過去の男たちと関係するシーンが写る。そこには妙な符合が感じられる。

男女の性器をこんなに大きく鮮明にスクリーンで見たのは初めてで、見終わって頭がくらくらした。やはりこの監督はとんでもない。

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