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2014年9月16日 (火)

ベネチアこぼれ話:その(3)

朝日新聞は大丈夫だろうか。というのは最近よく言われることだが、最近のベネチア関係の記事を見てもそう思った。映画祭報告は、「コンペティション部門は、冗長な作品や小粒な作品が目立ち全体的に低調だった」と始まる。

私は1992年に初めてこの映画祭に参加してから、かなり頻繁に通っている。たぶん15回は行っただろう。私の眼には今回のコンペはかなり粒ぞろいに見えた。あえて監督の名前や映画の話題性、あるいは完成度の高さでさえなく、いろいろな意味で意欲的な志の高い作品を選んでいるように見えた。

もし「冗長」や「小粒」と書くならば、どれがどのようにそうだったか書いてほしい。文章を読むとそれぞれの映画を評価しているようなので、よくわからない。「全体的に低調」な中で無冠に終わった『野火』は、どう考えたらいいのか。

それ以上に、こうした書き方は傲慢だと思う。その傾向は朝日新聞全体を覆う空気のようなものかもしれない。もちろん今回の大騒ぎは、首脳部の判断ミスが大きいと思うが。

それから傲慢でも間違いでもないが、国際映画祭関係でどうかなあという記事が最近あった。「いちからわかる!」シリーズで「吉永さん主演の映画が賞をもらったね」というもの。見出しに「最上位の国際映画祭は14」と書かれている。

これを読むと普通の読者は、モントリオールや東京は世界14大映画祭の1つなんだと思うだろう。しかし映画業界の人や海外の映画祭にくわしい評論家にとっては、モントリオールや東京の方がトロントより重要なんてありえない話だ。

そもそも、根拠となる国際映画製作者連盟なるものがそれほど権威があるのかどうか。HPを見たら、わずか29の国の映連しか参加しておらず、フランスもイタリアも不参加。参加している日本の映連だって大手4社だけがメンバーだし。そのうえ、彼らが認定する映画祭が4種に分けられていて、「コンペのある長編映画祭」は確かに1番上にあるが、どこにも「最上位」とか「ランクが上」とは書かれていない。

例えば、山形ドキュメンタリー映画祭や東京フィルメックスは国際映連の認定さえ受けておらず「4種」の外だが、十分に重要だと思うし、国際的な評価は東京国際映画祭より高い。

この記事を読めば東京国際関係者は喜ぶだろうし、日本での興行のためにモントリオールを利用する一部のプロデューサーには有難がられるだろう。朝日も今年はわざわざ記者を送ったので、社内的にも座りはいいかもしれない。だけど、真実はそこにはないと思う。

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