昔のハーフの俳優たち
最近では宮沢りえや滝川クリステルなどハーフやクォーターの俳優や芸能人がたくさんいるけれど、昔はどうだったのだろうか。そんなことを考えたのは、内田吐夢監督の『たそがれ酒場』(1955)をDVDで見たから。ジブリの鈴木敏夫さんがどこかで名作と書いていた。
この映画はシベリアに抑留されていた内田の帰国後復帰第二作だが、今見ると評判のいい第一作『血槍富士』(55)よりずっとおもしろい。
大衆酒場の半日を描いたものだが、あらゆる種類の人々が現れ、民謡から歌謡曲からクラシックまで多くの歌が流れて全く退屈しない。2階という設定でその上に舞台もあり、その微妙な位置関係をカメラが流麗な動きでとらえてゆく。
そこに現れる毎朝新聞記者役が江川宇礼雄。欧米風の顔立ちで恰幅もよく、スーツをバリッと着こなしている。全体の狂言回し的な元画家役の小杉勇を戦地で知っており、この酒場で再会する。江川は清水宏監督のサイレントの傑作『港の日本娘』(33)で3人の女に愛されるハンサムを演じているが、彼が主役とは言えないだろう。
とりわけ戦後はあまりぱっとしない。例えばこの映画に出ている同世代の小杉勇のように、『五人の斥候兵』(38)『土』(39)など有名な主演作が並ぶわけでもない。『たそがれ酒場』にしても、端役に近い。
『港の日本娘』と言えば、もう1人ハーフがいる。井上雪子がそうで父親がオランダ人というが、その美貌や身のこなしは惚れ惚れする。『港の日本娘』ではドラというハーフの役を演じるが、江川と結婚して金持ちになった彼女の洋装の数々の美しいことといったら。
この映画のスターは、江川と結婚できなかった及川道子の方だ。井上は日本初のトーキー『マダムと女房』(33)にも出ているが、ここでは端役に近い。彼女がジャズを歌う姿は一番さまになっているけれど。
井上のたぶん唯一の主演作は小津安二郎の『美人哀愁』(31)だが、これはプリントが現存しない。彼女は2年前に97歳で亡くなったことが報じられたが、戦後は映画には出ていないようだ。
かつてはハーフ俳優は主演を演じることは少なく、不遇に終わったのではないか。草刈正雄あたりまではそうだった気がする。個人的には、昔の映画にハーフが出てくると、妙にウキウキする。これは何なのだろうか。
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