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2014年10月10日 (金)

初めての釜山:その(3)

初めて行く映画祭は、今回のように3泊では十分ではない。会場の場所や交通手段を確認し、プレス上映の有無やチケットの入手方法などを調べているだけで、時間がたってしまう。そのうえ、今回は真ん中にシンポの参加という仕事もあった。

それでも見た数本について書いておきたい。今回一番おもしろいと思ったのは、台湾の鈕承澤(ニウ・チェンザー)監督の「軍中楽園」Paradise in Service。映画祭のオープニングに選ばれた作品で、ホウ・シャオシェン監督が製作に名を連ねている。

映画は1969年に始まり、1970年代の台湾の従軍慰安所で働く青年パオを中心に描かれる。彼は軍隊で水泳ができなかったためにそこで働くことになるが、そこで出会う娼婦のニニに恋をする。軍隊の上司や同僚もそれぞれそこの娼婦と恋仲になり、いくつかの事件が起こる。

中国と一発触発の状態だった時代が、素朴な青年の目を通じてノスタルジックに描かれていた。ニニがギターを弾きながら英語で歌う「帰らざる河」や彼女が残して行った万華鏡や時計など細部も丁寧に描かれていて、かつてのホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンを思わせる。彼らのような鋭さはないけれど。

次におもしろかったのは、杉野希妃監督の『欲動』。今回この作品が新人監督賞を取ったというので見たいと思った。彼女は既に女優やプロデューサーとしても有名だが、監督としての力量も相当だった。

物語は、死が迫った30代の男が、妻を連れてバリ島に住む妹夫妻を訪ねるというもの。バリ島の夕暮れや夜明けの微光のなかで、生と死や愛と性という問題を正面から描いている。長回しや固定ショットの効果的な使い方も含めて、明らかに「作家の映画」の風格を持つ。その演出のタイプは河瀬直美に近い。今後ヨーロッパの映画祭に出てゆくことは間違いない。

中心となる妻役の三津谷葉子がいい演技を見せるし、妹役の監督本人もうまい。何といっても、日本にはないバリ島特有の空気に戸惑いながら適応してゆく感じが身体的に伝わってくる。バリ島の雰囲気が何ともよくて、行ってみたくなった。

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