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2014年10月12日 (日)

イーストウッドよ永遠に

昨日、ゴダールの『さらば、愛の言葉を(3D)』の若々しさについて書いたが、帰国後見たクリント・イーストウッドの『ジャージー・ボーイズ』もそれに劣らず溌剌とした気持ちのいい映画だった。ゴダールもイーストウッドも、同じ84歳。

もちろん意識的に映画とは何かを追求してきたゴダールと違って、イーストウッドは本能的に映画史を吸収し、体現している。今回の新作の若々しさも、音楽の楽しさをそのまま見せる透明な演出にあるといったらいいのか。

映画は1950年代から60年代のアメリカのニュージャージー州を舞台に、若者が集まってバンド「ザ・フォーシーズンズ」を作り、「シェリー」などのヒットを飛ばして有名になってゆく様子を描く。いわゆる音楽映画だが、4人の俳優が実際に自分の声でたっぷりと歌を聞かせてくれるのがいい。

最初に主人公のフランキー・ヴァリが「母の瞳」を声が裏返るファルセット・ボイスで歌って、地元のマフィアの親分を演じるクリストファー・ウォーケンが涙する場面から、するすると引き込まれる。4人の仲間ができて、喧嘩をしながらもなんとかチームを組みながら有名になってゆく時も、いいタイミングで全曲演奏が挟み込まれる。

時々4人の1人がカメラを向いて、「実はこうなんだよ」と解説するのも絶妙。まるでウディ・アレンみたいで、普通はメジャーな映画にはあまり使われない手法だが、イーストウッドの手にかかるときちんと収まる。

作曲担当として最後にグループに加わるボブ・ゴーディオが見出されるきっかけが、15歳で作った「ショート・ショーツ」というのにも驚いた。これは、深夜テレビ番組「タモリ倶楽部」の冒頭に流れる曲だった。パンティ姿で踊る女性のお尻を次々に見せるところに流れていたが、これがアメリカで有名な曲とは知らなかった。

人気ミュージカルの映画化らしいが、ミュージカルから生まれた『シカゴ』や『ナイン』のように映画ならではの派手な映像処理に頼っていないのがいい。退色させたようなカラーで、当時の貧しいイタリア移民たちの生活やチーム結成後の友情と裏切り、あるいは家族との確執を痛みと共に描く。

パンフレットを買ったら、イーストウッドが「敬愛するクラシックについての映画も、いつか監督するチャンスがあるかもしれないね」と言っていた。本当に永遠に長生きして、もっと映画を作って欲しい。

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コメント

「クリントイーストウッド」は、僕にしてみると、やはり「ローハイド」の「ロディー」です。小学校のときに、家で唯一9時から見ていい番組でした。なんか、ぜんぜん違う世界の話しだっただけど、フェーバーさん、ウッシボンなどよいキャラがいて、おもしろかった。その後は、荒野の用心棒、ダーティーハリーですかね。
といか、「ザ・フォーシーズンズ」の「シェリー」に反応してしまった。これは、中学生のときに、ドーナツ盤買いました。あの裏声の曲は新鮮でした。ちなみに、B面はたぶん「サイセンス・イズ・ゴールデン(沈黙は金)」という曲(カバー)で、僕はこっちの方が好きでした。

投稿: jun | 2014年10月12日 (日) 22時00分

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全く予備知識なしで観賞。 元はミュージカルだし、どうせ架空のグループのストーリーなんだろうと高をくくっていた。 ので、まず驚き! あのグループの話だったとは... ところがキネ旬のインタビューによると、監督のイーストウッド自体、そんな状態だったよう!(...... [続きを読む]

受信: 2014年10月17日 (金) 17時04分

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