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2014年11月 5日 (水)

『さよなら歌舞伎町』の映画らしさ

1月24日公開の廣木隆一監督『さよなら歌舞伎町』を見て、久しぶりに映画らしい映画を見た気になった。原作ものではなく、映画のために練り上げられた脚本を、映画らしいじっくりとした描写で見せてくれたから。

今年の邦画は『TOKYO TRIBE』とか『渇き。』とかもうすぐ公開の『日々ロック』のような、勢いだけのようなものが多かったせいか、あるいは東京国際映画祭で我慢大会のような映画が多かったからなのか、こんな映画が見たかったと思った。

物語は歌舞伎町のラブホテル「ホテル・アトラス」を舞台に、ある日そこに集ういくつものカップルを描く、いわば「グランド・ホテル形式」。主人公はその店長の徹(染谷将太)で、集まるカップルの裏にあるリアルな人間模様を見る。

恋人に内緒でデリヘリで働く韓国人のヘナ(イ・ウンウ)とその客(村上淳)。家出した女子高生を騙してデリヘリ嬢にしようとする男。AVの撮影にやってきたのは徹の実の妹だし、徹と同棲中のミュージシャン志望の沙耶(前田敦子)は、プロデューサー(大森南朋)に仕事をもらうためにやってくる。

一番おもしろいのは、そのホテルの従業員の女(南果歩)のエピソードで、彼女は殺人犯を匿って暮らしているが、時効まであと1日という日に、ホテルに来た刑事同士の不倫カップルに見つかってしまう。

こう書くとわざとらしいように見えるが、どのエピソードにも濃厚な人間ドラマが詰まっていて、そのそれぞれに泣き、笑う。イ・ウンウ演じる韓国のデリヘリ嬢がいい味を出している。彼女はお金がたまって明日帰国するという設定だが、終盤に恋人とホテルで会うシーンなど本当に泣けてくる。

荒井晴彦の脚本はある意味ではわざとらしく古めかしいが、十分に堪能した。震災後の福島の話やヘイトスピーチのシーンもあって、十分にアクチュアルだ。こんな真っ当な映画が、最近少なくなった気がする。

プレス資料を読むと、ホテル・アトラスは実際に歌舞伎町にあって、外観やフロントはそのままらしい。関係ないが、昔カンヌにはHotel Atlasというホテルが駅前にあって、日本人の溜まり場だった。今もあるのだろうか。

この作品は釜山の映画祭で上映していたが、イ・ウンウの熱演やヘイトスピーチのシーンを考えると、韓国の観客が見て良かったと思う。

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コメント

カンヌのアトラス、いまもありますよ~。

投稿: 石飛徳樹 | 2014年11月 5日 (水) 08時02分

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