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2014年11月18日 (火)

いつもおもしろいケン・ローチ

かつてケン・ローチは、『リフ・ラフ』(1991)のように労働者の本当に追い詰められた状況を描いていた。ところが最近の『エリックを探して』(2009)や『天使の分け前』(12)になると、ずいぶん楽しい。最初は恵まれない者の厳しい生活が出てくるが、最後に痛快な救いがあった。

1月17日公開の新作『ジミー、野を駆ける伝説』は、久しぶりの歴史物なのでどうなるかと思ったが、さすがにケン・ローチで権力と戦う男をじっくりと描きながらも、全体に爽やかな感じが満ちていた。

映画は、アイルランド独立後の内戦が終わった1932年を描く。だから『麦の穂をゆらす風』のように敵はイギリスではなく、国内の教会や右派などの保守勢力だ。そこに現れるジミーは、10年前の内戦中に逮捕を逃れてアメリカで暮らしていた男。

彼は10年前のコミュニティ・ホールを再建し、そこでかつてのように音楽やダンスや絵画教室を始める。そのことをアメリカかぶれと批判するカトリック教会や右派はジミーたちを攻撃する。

結局は悲劇的な結末が待っているのだが、見終わってもなぜか気持ちがいい。心の中を軽やかな風が通り過ぎたような気分になる。それはホールで人生の楽しみを知る若者たちの姿がじっくりと描かれているからであり、ジミーのかつての恋人との愛が胸を打つからだ。

主人公のジミーを演じるバリー・ウォードがいい。地味な感じなのに演説を始めるとカリスマ性を発揮し、みんなに支持される。恋人のウーナや父親が保守派なのにホール運動に参加する娘マリーなどを演じる女優達も、格別美人でもないのに、表情が豊かで見ていて嬉しくなる。彼等のたたずまいが、アイルランドの緑の風景にしっくりとなじむ。

ジミーとマリーの深夜のダンスのシーンや、ラストの若者が自転車で集まる場面など、さすがにケン・ローチで演出のキモをしっかりと抑えている。やはりケン・ローチの映画ははずれがなく、いつもおもしろい。個人的には、今回は全体として少しインパクトが弱い気がしたけれど。

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