意外におもしろいチューリッヒ美術館展
東京国際映画祭で六本木ヒルズのTOHOシネマズに通っていると、あの細長い穴倉でネズミになったような気分になる。だから映画の合間に時間ができると、美術展を見る。先日ここに書いたサントリー美術館の「高野山の名宝」展のほかに見たのは、12月15日まで開催の国立新美術館の「チューリッヒ美術館展」。
「〇〇美術館展」が多すぎるという批判はここでも何度も書いた。オルセー、ルーヴル、メトロポリタン、大英博物館など世界の大美術館はだいたい3年おきに日本に来ている。日本のマスコミが億単位の金を払って持って来て、それを回収するために大宣伝をするので、いつも満員で作品はまともに見えない最悪のパターンだ。得をするのは、金をせしめる海外の美術館だけ。
しかし「チューリッヒ美術館」とは、聞いたことがなかった。スイスのチューリッヒにあるだろうが、もともとチューリッヒ自体に行ったことがない。しかしチラシには「10万点以上の所蔵品」と書いてある。
展覧会は意外におもしろかった。印象派からポスト印象派を経てシュルレアリスムくらいまで、主な画家の作品を教科書のようにまんべんなく見せていて、重要な画家は数点ずつ展示してある。モネは4点あったが、幅6メートルの《睡蓮の池、夕暮れ》は、さすがに圧巻。
もちろんそのままでは飛行機に乗らないので、2つに分けて運んだのだろうが、この大きさのものは日本にはまず来ない。ドイツのマックス・ベックマンやチェコのオスカー・ココシュカなどドイツ=オーストリア系作家の作品があるのも、スイスらしいかもしれない。
さらにフェルディナンド・ホドラーやフェリックス・ヴァロットン、アルベルト・ジャコメッティなどスイスの芸術家たちの作品が数多く展示してあるのもいい。終わりにジャコメッティの細長いブロンズが5点もあるのは、個人的に嬉しかった。国立西洋美術館の「ホドラー展」を見たくなった。
特にテーマなどを考えず、総じて日本人向けのわかりやすい展示だった。その意味ではいいのだが、物足りない気もする。それでも、我慢大会のような東京国際映画祭のコンペ作品の合間に見たので、大きな青空を見たようないい気分に浸ることができた。
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