映画が見せる1960年代の日本
学生の映画祭「ワーカーズ2001」が昨日終わった。7日間で1002人の動員は多いのかわからないが、学生たちは満足そうだった。去年の「監督、映画は学べますか?」より多く、一昨年の「新・女性映画祭」よりは少し少ない。
今回私自身が見て一番おもしろかったのは、前に書いたように『その場所に女ありて』(1962)だったが、同じ頃に作られた土本典昭のドキュメンタリー『ドキュメント路上』(1964)と『ある機関助手』(1963)にも強く心を動かされた。
日本が高度成長期に向かう時代で、『その場所に女ありて』は暗いトーンとはいえ、OLが広告業界でバリバリ活躍する、いわば社会の表舞台を描く。土本のドキュメンタリーは、いわゆる肉体労働者の姿を克明に追いかけながら、当時の日本の姿をじっくり見せる。
『ドキュメント 路上』は、タクシー運転手の毎日を追う。運転するタクシーから見える人々と風景。『その場所に女ありて』はカラーのせいもあって、何ともかっこいい銀座が写っていたが、こちらは白黒で車やトラックやバイクや市内電車で混雑する東京の混乱を見せる。
ナレーションもなく、エネルギーと雑音に満ちた東京がシュールなくらい断片の組み合わせで写る。そこにかぶさる運転手たちの日常の声。同時録音でないので声がずれているが、それがまたいい。こんな混沌の街に住むなんて、とても尋常ではない感じがする。
『ある機関助手』はカラーで、急行みちのく号で上野と水戸の間を往復する機関助手の一瞬、一瞬を映し出す。カメラは常にこの若者のそばにいて、石炭を入れたりギアを切ったりする作業を追う。
あまりに過酷な労働で、見ているとほとんど戦争のようだ。5分の遅れを取り戻すために必死に働く姿は、今の日本にはもうないような気がする。同時に蒸気機関車というのが、これほどの労力を必要としていたことにも驚いた。
新幹線も少しだけ写るけれど、機関車の迫力に比べたらずいぶんちゃちな感じがした。日本中でたった2人で蒸気機関車を動かしていたのかと思うと、気が遠くなった。どれも私が生まれた頃の映画だが、日本人は真剣に戦っていたのだと思った。
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