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2014年12月24日 (水)

安藤サクラの変貌ぶり

安藤サクラ主演の『百円の恋』を劇場で見た。東京国際映画祭で賞を取り、試写でも満員で入れない人が出たという話題の作品なので早く見たかった。これがかなり良かった。

最初は安藤サクラ演じる自堕落な女、一子が出てきて家族のお荷物になっているのを見て、また最近はやりのATG映画みたいなものかなと思った。『そこのみにて光輝く』とか『海を感じる時』とか。音楽もそれらしいし。

ところが、どうももっとオフ・ビートな調子だ。すべてを偶然に任せたような生き方は、むしろ『川の底からこんにちは』の満島ひかるが自らを下流というより「中の上」と位置付けたような、実に今風のものだと気づく。「絶望の国の幸福な若者たち」(@古市憲寿)にも通じるだろう。

弁当屋の家から追い出された一子は百円コンビニで働きはじめる。そこに勤めるいい加減でサイテーの男たち。そんななかで、通りがかったボクシングジムで中年ボクサー(新井浩文)を見て心が動く。

そこでそのボクサーと恋が芽生えるかと思いきや、男は逃げてゆくし、一子は思い立ってボクシングジムの門を叩くし。それから何と一子のプロへの道が始まる。

実は予告編も見ておらず、全くあらすじを知らなかったので、ありえない展開に仰天した。だらしなさの極致のような安藤サクラの顔や体が、ボクシングを始めて少しずつ締まってゆく。あれよあれよと立派な稽古を始め、美しくなる。

控室からリングへ向かう安藤のカッコいい姿が長回しのスローモーションで見せられた時には、素直に興奮してしまった。試合の様子も実にリアルで、最後の新井との再会までうまい。

これはとんでもない新人監督が出たと思ってパンフレットを買ったら、監督の武正晴は1967年生まれでもう何本も長編を撮っている。例によって私が知らないだけだった。ロケは画面に電話番号045が出たので横浜かと思ったが、動物園や海沿いの風景などずいぶん寂れていい感じだ。パンフを見たら山口県だとわかって納得した。

この映画はとにかく安藤サクラの変貌ぶりが一番の見どころ。今年の女優では、『紙の月』の宮沢りえと双璧ではないか。

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