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2014年12月18日 (木)

ドキュメンタリーの断片を見ながら

映画祭「ワーカーズ2014」は学生が作品を選ぶので、何本かは私も初めて見る。ミカ・X・ペレド監督のドキュメンタリー『女工哀歌』(2005)もその1本。映画としての出来はともかく、描かれた世界に驚いた。

主人公はジャスミンという名前の16歳の中国の少女で、地方からジーンズ工場に出稼ぎに来たばかり。時給は0.5元=7円で、朝の8時から夜中まで働く。まわりには同じ年頃の少女ばかり。食事は配布されたものを自分の部屋に持っていって食べる。

20歳のオーキッドはお洒落でダンスが大好き。近くの工場で働く恋人もいる。正月休みには、その恋人を連れて田舎に帰ると親戚が集まった。

工場の社長は元警察署長で、欧米の訪問客をもてなし、発注を取り付ける。そして各班長に納期を守るよう厳しく言いつける。出張先の上海で会うアラブ人風のイギリスの会社の代表には、ジーンズ1本5ドルでの納品を約束する。

そんな光景が断片のように続く。1つの話がきちんと終わらないのに、次の話が始まる。会話も時々不自然だから半分やらせかなとも思う。それでも明け方まで必死で働いて「永遠に眠っていたい」とつぶやく少女の映像に釘付けになる。

終わりに字幕で、撮影したテープが没収されたことやジャスミンの声などを後から別の人間が入れたことなどが説明される。確かにそのような感じがするし編集も安易だと思うけれど、それでもこの断片的な映像は強烈だ。今後、ユニクロなどの中国製の商品を見るたびに、この映画を思い出すだろう。

断片と言えば、映画祭をやっていると一度見た映画を断片だけ見ることがある。ドキュメンタリー『夢は牛のお医者さん』は、主人公が大学受験に合格するところまでを見て、涙一杯で外に出た。今年1番の泣ける映画だろう。

名作『サウダージ』は後半を見た。地方の絶望的な環境が見ていて恐ろしくなった。東京に住んでいると見えない世界がある。中国のジーンズ工場や新潟の山村や甲府のシャッター街の断片を見ながら、映画の持つ力を改めて感じた。

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