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2014年12月31日 (水)

今年最後の映画:『真夜中の五分前』

今年最後に見た映画は、行定勲監督の『真夜中の五分前』。釜山の映画祭で派手にプレミアが行われていたし、東京フィルメックスの特別招待作品でもあったので、期待して見に行った。

結果は、かなり微妙だった。上海の時計店で働く良(三浦春馬)が、美人の双子姉妹に惑わされるという内容だが、あまりのナルシスティックなファンタジーで退屈してしまった。

まず、人の良さそうな中国の老時計屋さんのもとで日本人が修行するという設定がわからない。戦前からモダンな都市として知られる上海のイメージにぴったりではあるが。それからプールで良とルオラン(リウ・シーシー=中国ではスターらしい)が出会うシーンがあまりにも淡すぎる。そこには恋愛が生まれた感じがなかった。

良はルオランを家に泊めるが、何も起こらない。ようやく手を握るのがずいぶん後とは、あんまりではないか。ルオランの双子の妹のルーメイはリウ・ルーシーの二役だが、その違いの演出がうまくいっていない気もする。最初からわからなくなるのはどうだろう。

ルーメイの婚約者ティエンルン(チャン・シャオチュアン=台湾では有名らしい)が、何ともわざとらしくてダサい。映画プロデューサーというが、いかにも怪しげで父親が著名な俳優という設定には見えない。そして双子姉妹がモーリシャスに旅行して、1人が死んでしまうという展開もあまりに唐突。

撮影は舐めるようなカメラワークで、時計屋や豪華な館の中の人間模様をじっくりと見せる。私はてっきり日本のスタジオで撮ったのかと思ったが、パンフを読むと全編上海での撮影らしい。

それくらい、上海の空気を感じなかった。猥雑さを一切欠いた、透明で端正な感じはこの映画には合っていたけれど。いい意味でも悪い意味でも行定ワールド全開の映画だった。フェルナンド・ペソーアの詩集(中国語訳!)が出てきたり、突然青い蝶がひらひらと飛んできたりするし。

公開から4日後の休日の午後に丸の内東映で見たが、広い劇場にお客さんは15人ほど。パンフによれば中国では10月に4000スクリーンで公開されたという。内容的には中国の美女に幻惑される日本の哀れな男の話なので、中国的にはOKなのかもしれない。もちろんそれは監督も考えてのことだろう。

釜山映画祭のマーケットでプロデューサーが見つかったというからこれを釜山でワールドプレミアするのはわかるけれど、東京フィルメックスはなぜ特別招待作品に選んだのだろうか。

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