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2015年1月13日 (火)

『ヴェラの祈り』の象徴性

朝、55歳の大学非常勤講師が21歳の女子学生の要求に応じて学内で全裸になったというニュースを聞きながら、ふと『ヴェラの祈り』を見ようと思った。最近『エレナの惑い』(2011年)を見たアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の2007年の作品だが、大学の教師が妻に不倫をされる話だと聞いていた。

ところが見てみると、そんな話ではなかった。ある男が妻子と田舎に行く。どうも実家のようだ。妻と息子と娘の4人で幸せな日々かと思ったら、男は妻から別の男性の子供を妊娠していると告げられる。

悩んだ末に堕胎させようとすると妻は昏睡状態に陥り、助けにきた兄まで気を失ってしまう。終盤にかつてのシーンのカットバックが実はという形で入るが、私は死者が蘇るホラーを見ているようで、一瞬何が何だかわからなくなってしまった。

巨大な工場に沿った大きな道路に面した寂しい家と周りに何もない田舎の家を行き来する。その中間に大きな1本の木があり、田舎の教会はなぜか斜面に建てられていて、その丘の上は墓地になっている。まるでキアロスタミの映画のような風景だ。

あるいは小川の水をカメラが追うと、次第に雨の中の風景につながってゆくところなどはタルコフスキーのようだし、最後の農夫たちの歌はソクーロフのようだ。

先日邦画『0.5ミリ』の即興演奏のような映像を見たばかりだったせいか、『ヴェラの祈り』の重々しく象徴性に満ちた、計算し尽くして作られた謎めいた映像は、どこか退屈な世界には見えたが。音楽もアルヴォ・ペルトとかバッハとかだし。

ちなみに大学の教師が妻に不倫されるというのは、この映画の原作のウィリアム・サローヤンの小説『どこかで笑っている』の設定のようだが、映画では主人公の仕事は全くわからないままだった。

パンフレットを見ていたら、この映画は田舎のシーンはウクライナ、都会のシーンはベルギーとフランスで撮影されたという。言葉など国を特定される要素はすべて排除して、無国籍な感じを狙ったらしい。全編ロシア語だったこともあり、私にはロシアそのものに見えたけれど。

ちなみにこの監督は、新作『リバイアサン』がゴールデングローブ賞の外国語映画賞を取ったらしい。映画終了後、劇場の方に会ったら、そんなことを教えてもらった。それにしても、ズビャギンツェフという名前はなかなか覚えられない。

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コメント

ぼくもエレナとヴェラ両方見ました。リバイアサン楽しみですね、ズビャギンツェフ。

投稿: さかた | 2015年1月13日 (火) 07時57分

ズビャギンツェフ、去年のカンヌで脚本賞を取った時も、プレゼンターが思い切り噛みまくってました。本人は涼しい顔で「ズビャギンツェフ……。極めたシンプルな名前じゃないか」とジョークで返して、場内爆笑でした。リバイアサンはすごい作品だと思います。

投稿: 石飛徳樹 | 2015年1月13日 (火) 08時33分

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