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2015年1月12日 (月)

『0.5ミリ』に驚愕

今頃恥ずかしいが、ようやく安藤桃子監督の『0.5ミリ』を見て、ぶっとんだ。これは間違いなく去年の日本映画のナンバーワンだった。年末にWEBRONZAの映画ベスト5に「邦画には決定的な作品がなかった」と書いたが、間違いだった。

安藤サクラがすごいのはわかっているが、その姉の桃子が監督で、そのうえ製作が父親の奥田瑛治。さらにサクラの義父の柄本明まで出ている。そんなセレブ家族ムービーの感じがどこか嫌で見に行かなかった。

今回、キネ旬ベストテン2位となったので、ようやく見に行った。これが冒頭からすごい。ボケ老人のヘルパーをするサワ(安藤サクラ)が、突然小便をする老人に近くのコップを差し出すところから始まる。家族にどうしてもと頼まれて添い寝を引き受けたら大火事になって、ようやく映画の題名が出る。

それからサワは怪しげな老人を誘っては自宅に入り込む「押しかけヘルパー」になる。カラオケとホテルを間違えたヘンな老人に始まって、駐輪場の自転車をパンクさせる老人(坂田利夫)、元教師のスケベ老人(津川雅彦)などの生活に入り込む。

冒頭から映画がどう展開するのか全く想像できない。ある老人との話が突然プツンと終わり、次の話が始まる。そして坂田や津川などがとても演技とは思えない「素」の顔を見せる。まるで「ドッキリカメラ」を見ているようで、見ていてドキドキする。

奇想天外の人間ドラマの間に、高知の海岸や水田のそばの道がいい感じで出てくる。あっという間の3時間16分で、出てくる老人のように安藤サクラに手玉に取られた感じで映画は終わる。終盤に冒頭のシーンと呼応する場面となり、柄本明が出てきたかと思ったらアッと驚く結末へ。

気の滅入る介護の話が、痛烈な笑いと共に語られる。老人を食い物にするようなサワが、どうしても憎めない。時々彼女がほほ笑むとホッとする。ところで一体彼女は何者なのか、何の説明もない。

最後の最後まで驚愕の連続だった。この監督の人間や風景のリアルを切り取る鋭い感覚は天才的だ。日本映画でこれだけ驚いたのは、『サウダージ』以来かもしれない。ぜひ海外の映画祭にも出て欲しい。

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