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2015年1月 6日 (火)

『千年の一滴』の描く神秘の日本

一応フェイスブックはやっているけれど、あまり更新していない。それでも暇な時に見ると、おもしろい情報もある。天皇の新年挨拶の平和主義とか、サザンの紅白の歌の過激さとか。『千年の一滴 だし しょうゆ』というドキュメンタリーを見に行ったのも、フェイスブックからの情報だった。

ポレポレ東中野が満員になっているという情報だったが、あの映画館でやるドキュメンタリーは『立候補』とか『ある精肉店の話』とか『夢は牛のお医者さん』とか、時々大当たりがある。家からも近いので、何の情報もなしに見に行った。

着いてみてわかったのは、まず日仏合作のドキュメンタリーで、フランスはアルテ、日本はNHKの製作ということ。一言で言うと、フランス人に日本料理の基礎となるだしとしょうゆを説明しましょう、という内容らしい。

映画が始まってちょっとがっかりした。いわゆるNHKのドキュメンタリーで、説教くさい。やたらにナレーションと音楽が多く、スローモーションとコマ落としが繰り返される。そのうえに「日本では」と日本の神秘性が強調される。

それでも見てよかったと思うのは、自分がよく知らない世界だったから。第一部の「だし」は、京都の料亭から始まり、そこで使われるダシが北海道の昆布と鹿児島のカツオ節からできることが説明されて、それぞれの製造過程が写される。

昆布は2年目のものが味がよいと言いながら巧みに海底から探したり、一度乾かしたものを夜露に当てる日を選んだりと、職人のカンに頼るところが大きい。それはカツオ節も同じで、叩いて音を聞いてできがいいかを知る。カツオ節でカビがそんなに大きな役割をしているとは思わなかった。

お寺の精進料理では、カツオ節ではなく、干し椎茸を使う。これを作る様子も出た。森の中の木に切れ目を入れて、椎茸の種が植えられるのを待つ。ここでもカンだけの勝負だが、実際はもっと人工的に作られているのかもしれない。

カビといえば、第2部の「しょうゆ」は全編が麹カビの話。しょうゆは大豆にカビを生えさせて作るが、酒とみりんは米にカビを生えさせる。稲霊(いなだま)と呼ばれる麹菌を稲穂から探して酒を造る職人もいるが、多くは種麹屋に頼る。

日本に10軒ほどの種麹屋が、その種を4000軒ほどの酒造会社に送る。ワインはイースト菌だが、酒は日本麹菌=アスペルギルス・アルゼで日本にしかないらしいといった「日本独自の」という表現が目立つのがちょっと気になる。もっと産業化した酒造り、しょうゆ作りもあるだろうが、あくまで手作りの職人だけを見せる。

そういった日本の神秘化は気にはなるけれども、だしや醤油や酒の原理を目で見せらると、やはり和食を大事にしようという気になる。そういえばこの映画である教授が言っていたが、人間が「やみつき」になる味は、油、糖、だしの3つで、だしだけが健康にいいらしい。だし作りをまじめにやってみようかな。

このドキュメンタリーの監督は柴田昌平で、NHK出身のようだ。

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