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2015年2月19日 (木)

グザヴィエ・ドランは期待に応えたか

4月25日公開のグザヴィエ・ドランの新作『Mommy/マミー』を見た。ドランと言えば、19歳で撮った『マイ・マザー』(09)がカンヌの監督週間に出て以来、新世代のトップランナー。5本目となる25歳のこの作品は、昨年のカンヌでゴダールの『さらば、愛の言葉よ』と共に審査員特別賞を受賞している。

個人的には『わたしはロランス』(12)を見た時に、その華麗なる映像に言葉にならないような衝撃を受けた。その後3本をすべて見たが、映像的に『わたしはロランス』ほどのショックはなかったし、母との愛憎をめぐる青年の話ばかりで、いささか退屈した。

では今回の作品はどうだったかと言えば、相変わらず刺激的で激しいパワーが伝わってきたが、内容的には繰り返しの印象を受けた。一番おもしろかったのは、1対1比の画面で撮ったことだろう。つまりスクリーンが真四角だった。

もちろん実際には通常のヴィスタサイズの左右が黒味になる。1対1.85だから、普段の半分ほどしか見えない。当然ながら1人が写るのにピッタリで、会話のシーンで複数の人物を見せるのには向いていない。真四角がなぜか少し縦長に見えるので、ちょうどスマホの画面みたい。

実際に映画の中で、主人公の青年が母とその友人の女性3人を携帯で写真に撮るシーンがある。例の無理やり寄って写った感じ。映画全体が、孤独と隣り合わせの愛憎を描いているので、真四角の画面が実に生きている。

物語は精神的な障害を持つ主人公の青年スティーヴが、矯正施設から出て母親のダイアンと暮らすさまを描く。母も分裂症気味で、この2人の関係はエスカレートしてゆく。そこに近くに住む失語症の女性カイラが加わる。この3人の不思議なトリオが一瞬の平和をもたらす。

冒頭から母親と息子の罵りあう声が続く。実は私はこれほどひどいフランス語のなまりを聞いたのは初めて。そのうえ、英語も交じっている。ダイアンもカイラもそうだし、裕福な人々も含めて、出てくる女性に美人はいない。どこか醜く歪んでいて、正直なところ近づきたくない感じ。

映画は138分間、3人の閉じた愛憎劇を描く。それは見ていてつらいが、朝日や夕暮れの光に包まれた彼らの姿は時おり美しく、それがスローモーションで見せられてノスタルジックな音楽が流れると、うっとりしてしまう。2度ほど、画面が横に広がって大きくなる。するとここぞとばかりに3人は横並びで写って、解放感が溢れる。

1対1の画面といい、激情のほとばしる映像といい、さすがにドランだと思った。しかし、次は全く新しい世界を撮ってほしい気もした。

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