「朝日」の「国民戦線」党首インタビューに考える
1月末の「朝日」に1面を使った、フランスの「国民戦線」マリーヌ・ルペン党首へのインタビューが載った。最初は、また「朝日」が血迷ったことを、と思った。しかし読んでみると、意外にまともなことを言っていた。
「国民戦線」Front Nationalはフランスでは極右政党と言われ、従来から外国人を排斥し、EUからの離脱を叫ぶ「危ない」政党というイメージだった。ところが、最近はだんだん支持を増し、去年の欧州議会選挙では25%を獲得してフランスの第一党になった。
そして今回の週刊誌襲撃事件があった。だからこのインタビューはいいタイミングではある。現党首の父親ジャン=マリー・ルペンが党首の頃は、言いたい放題の「右翼じいさん」という感じだった。ところが娘はずいぶんソフトで、知的な言葉を使う。
「肌の色や宗教がどうあろうとも、フランス人はフランス人。私たちが守る対象です」。単純な外国人排斥ではない。むしろ日本より進んでいるかもしれない。
そして日本の国籍法を支持する。「私たちが求めるのは、まさにそのような制度です。フランス人は、フランス人の親から生まれるか、フランスに帰化するかだけ。帰化自体は否定しませんが、そのためには罪を犯さず、規則と価値観を共有し、運命を共にする意思を持つ必要があります」
外国人の帰化が極めて難しい日本の現状を考えると、帰化を肯定するのだから、やはり現在の日本よりよほどまともだ。さすがに文化の多様性には否定的なようだが。
「自由競争に基づき、金融の影響を大きく受ける『米国型のグローバル主義経済』は、我が国にも、地球全体にも、悲劇をもたらすと考えるからです。その点、日本はすばらしい。フランスが失った通貨政策も維持している。日本は愛国経済に基づいたモデルを示しています」
これはほめ過ぎか勘違いだが、それにしても不思議な気分になる。インタビューをした国末編集委員も彼女のことを「不快であろうと、質問にも動揺せずに熱意を込めて語る。勢いのある新興企業の社長といった感じだ」と印象を述べている。
また同党の新世代議員は「以前は日本の右翼団体になぞらえられた。今は安部晋三氏の自民党に近い政策の党だ」と語る。今の自民党は、フランスに持っていくと人気の極右政党に近いといのは、どう考えたらいいのか。日本は外国人に対する政策は相当に遅れているうえに、最近は全体が右傾化している。フランスはだんだん愛国主義に傾いている。2つの国が近づいているのはそういうことだろうか。危ない時代になった。
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