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2015年2月 7日 (土)

今年の「メディア芸術祭」は小粒か

5年ほど前から、国立新美術館で開催される「文化庁メディア芸術祭」(関係者は「メ芸」と呼ぶらしい)に足を運んでいる。入場は無料だし、毎年かなり刺激的な作品に出会うことができる。2年前にこれと「恵比寿映像祭」についてWEBRONZAに書いた時、「メ芸」の予算が2億3千万円と聞いてびっくりした記憶がある。

確かに国内外から公募で、選ばれると賞金のほか、外国人は日本への旅費、滞在費も出る。部門はアート、エンタテインメント、アニメーション、マンガの4つで、各部門の審査委員への謝礼や分厚いカタログなどを考えると、それだけかかるのかもしれない。

今年はなぜかオープニングの招待状が送られてきたので、行ってみた。リボンを胸に付けられたが、私より大きなリボンが少なくとも2種類は目についたので、ちょっと嫌な気がした。こんなところに序列をつけるのは、やはり文化庁主催だからか。

今年は例年に比べると低調だったと思う。とりわけ大賞が該当者なしだったアート部門がそうだった。おもしろかったのは、優秀賞で坂本龍一と真鍋大度による「センシング・ストリームズ―不可視、不可聴」。今年の札幌国際芸術祭での展示の東京バージョンらしい。

六本木ヒルズやミッドタウンなど、都内に設置されたアンテナが電磁波を収集し、そのデータが会場のスクリーンに再現されるというもの。コントローラーで周波数を変えると、見え方が変わってくる。だから何なのか最後までわからなかったが、視聴覚的な完成度は高い。

これまたよくはわからなかったが、コンセプトがおもしろいと思ったのが、同じく優秀賞の五島一浩「これは映画ではないらしい」。映画や動画を構成するコマ(静止画)の連続ではなく、コマのない動画カメラで映像を見せるというもの。光ファイバーを通った光がフィルムに感光されてそれをスライドすると動画が生まれるらしいが、私にはよくわからない。

エンタテインメント部門はゲームが中心で私には縁がなさすぎるし、マンガも原画の展示が中心で展覧会ではおもしろさはわからない。アート以外はアニメの短編がいつもおもしろい。大賞の「The Wound」はロシアのアンナ・ブダノヴァの9分余りの作品だが、これが今回のメ芸では一番だった。

心の傷に苦しむ少女の空想が、毛むくじゃらの怪物「Wound」ウーンドになって、彼女をコントロールする。黒を基調とした手書きのアニメで描かれる世界は、誤解や嫉妬、悲しみなどを具体的だが象徴的に表してゆく。言葉はなく、うめき声のみ。これが24歳の最初の作品という。

それから優秀賞のアルゼンチンのサンチアゴ・‘ブー’グラッソの12分ほどの「PADRE」も衝撃的だった。1983年の軍政末期のアルゼンチンを描いたもので、周囲の社会の変化に目を閉ざして父親の看病をする女を描く。実写と粘土とCGを巧みに組み合わせて描く世界の気持ち悪さに驚いた。

そのほか短編アニメはフランス、中国、韓国の作品も心に残った。こんなおもしろい作品は、アニメを目玉にしているという東京国際映画祭の中に取り込んだらいいのにとつくづく思う。せめて同時期に開催すれば、同じ六本木で盛り上がるのに。メ芸は2月15日まで。

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コメント

「1983年の群生末期のアルゼンチンを描いたもの」の「群生」は『軍政』でしょうか?
誤字については、僕の方がひどいと思いますが、これを見て、ちと思い出しました。
人の文章をチェックしていて、「誤字」だろうと思ったのですが、ちょっとよくわからないことがありました。そこで、「誤字らしきもの」とかいたのですが、「ゴジラ敷物」となってました。さすがに、気がつき、直しましたが。

投稿: jun | 2015年2月 7日 (土) 21時22分

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