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2015年2月22日 (日)

マイケル・ウィンターボトムの描くイタリア旅行

最近、イタリアで撮られたアメリカ映画をよく見る気がする。ウディ・アレンの『ローマでアモーレ』を始めとして、『トスカーナの休日』とか『食べて、祈って、恋をして』とか。もちろん昔から『ローマの休日』や『旅情』のような映画は数多いけれど。

それらはだいたい能天気な観光映画が多いが、マイケル・ウィンターボトムの新作もイタリア旅行がテーマという。GW公開の『イタリアは呼んでいる』で、原題もThe Trip to Italyでそのものずばり。あの社会派のウィンターボトムがどうしたのだろうかと思った。

ところが見てみると、これがやはりウィンターボトムらしい知性に満ちた映画だった。イタリアと言えば「アモーレ」の国なので、普通は男女の物語だが、これは中年男2人がイタリア各地で1週間を過ごす「バディ・ムービー」。

2人を演じるのはスティーヴ・クーガンとロブ・ブライドンという喜劇俳優で、実名で出てくる。そして2人でアル・パチーノやロバート・デニーロを始めとして、ハリウッドの有名俳優の真似をしながら話し尽くす。これが抜群におかしい。

北のピエモンテから南のナポリまで、風光明媚な土地を訪れ、各地の有名レストランで食事をするシーンが続く。だけどどこか違う。有名な観光地よりも何気ない普通の風景ばかり写るし(それが美しい)、レストランでは料理そのものよりも、真剣に料理を作る料理人や給仕人たちの姿の方が印象に残る。

そもそも2人は自分たちのギャグに夢中で、口では「おいしい」と何度も言いながらも、本当に料理を味わっているようには見えない。ちゃんと地元の女性との間にロマンスがあったりするが、それもさほど真剣には思えない。

結局は、2人の中年男のそれぞれの現実が浮かび上がる。スティーヴは妻子と別居していて、イビサ島にいる息子と毎日スカイプで話す。ロブはマイケル・マン監督からオファーがあり、旅行地でオーディションのビデオを撮影して送る。そしてイタリアでの浮気を気にする。2人の果てしない物真似大会は、まるでそれらの憂鬱を隠すためであったかのようだ。

合流したステーィヴのマネージャーが、『イタリア旅行』のイングリッド・バーグマンや『軽蔑』のブリジット・バルドーの話をする。それに応えるように、ポンペイ遺跡に残る死んだ人々の姿や墓地の骸骨が生々しく写る。まるでロッセリーニの『イタリア旅行』を再現するかのように。そこで立ち上がる男女関係の現実は、『イタリア旅行』や『軽蔑』を確実になぞっている。

『軽蔑』は『イタリア旅行』に捧げられたゴダール流のリメイクだが、この映画は原題からしてそれに連なるものだったのだと、見終わって思った。それらの監督の名前は一切出さずに、きちんとイタリア各地の風景と料理も見せて楽しませるところが、ウィンターボトムらしい知性だろう。

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