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2015年2月 5日 (木)

シュレンドルフの現在

前に書いたように、ドイツのフォルカー・シュレンドルフは私の学生時代、神様の1人だった。『ブリキの太鼓』(79)の後は大味な大作を何本か撮っていたが、21世紀になってから小粒の秀作を立て続けに発表している。

「ドイツ映画祭2005」で上映した『9日目』(04)も、昨年公開された『シャトーブリアンからの手紙』(11)も、第二次大戦中のドイツとフランスの関係を一つの場面に絞ってきっちりと描いていた。今回の『パリよ、永遠に』(14)もその流れに連なる、いわば「和解」シリーズの1本。

ドイツ軍のパリ防衛司令官コルティッツは、ヒトラーからのパリ壊滅命令を受けて実行に移そうとする日の朝方、中立国スウェーデンのノルドリンク総領事の訪問を受ける。総領事の目的は、オペラ座やルーヴルやノートルダム寺院などに仕掛けた爆弾のスイッチを押す指令を止めさせることだった。

もちろん現在もそれらは存在するわけだから、結果は最初からわかっている。観客はサスペンスよりも、コルティッツを演じるニエル・アレストリュプと総領事を演じるアンドレ・デュソリエの丁丁発止を楽しむことになる。

何といっても、ヒトラーの命令と良心に悩むニエル・アレストリュプがすばらしい。最初は総領事の提案を完全に無視して官僚的な態度を取るが、自分の妻子を救う話になると、だんだん心が揺れてゆく。優雅でしたたかな総領事を演じるアンドレ・デュソリエもぴったり。

物語の大半がコルティッツの住むホテル・ムーリスの部屋で進む。しかし時おり窓から見えるパリが、だんだんと朝になってゆく背景が生きている。夜が明けて、朝日の当たるパリにうっとりしてしまう。

もともとはフランスでヒットした芝居だという。確かに登場人物も少ないし、戦闘も遠景の小競り合いしか見えない。いささか一本調子だが、冒頭にワルシャワが破壊されるドキュメント映像が写り、フルトベングラー指揮のベートーベン第七交響曲がかぶさるところや、ラストのジョセフィン・ベーカーの歌声など、細部に工夫を凝らしている。

『シャトーブリアンからの手紙』に比べると、名優二人を使って難なくこなしている感じもするし、いかにも仏独の「和解」映画にふさわし過ぎる。そんな優等生的な部分はあるが、映画を見る楽しみをきちんと与えてくる小品だと思う。

そういえば、コルティッツの側近のドイツ兵を演じたのは、「ドイツ映画祭」で上映した『CRAZY』や『夏の突風』に主演したローベルト・シタートローバーで、懐かしかった。プレス資料には彼の名前はなかったが。

話は変わるが、2005年のベルリンでシュレンドルフ監督にインタビューした時、彼はフランスのブルゴーニュの白ワインを飲んでいて、私にも勧めてくれた。心地よさそうにフランスのワインの香りを楽しむ姿は、やはり「和解」の人だった。

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