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2015年2月20日 (金)

『マップ・トゥ・ザ・スターズ』に震える

1日に1度くらいはフェイスブックをパラパラと見る。そこで得た情報で映画を見に行くこともある。昨年末に公開されたデヴィッド・クローネンバーグの新作『マップ・トゥ・ザ・スターズ』をアップリンクに見に行ったのも、誰かがそこで見たと書いていたから。

かつては「ぴあ」があったから、一目でどこで何をやっているかわかった。ところが今ではネットでそれぞれの映画か劇場のサイトを見るしかないから時間がかかる。そんな時、フェイスブックの情報で動いてしまう。

でもこれは劇場で見て良かった。最初はさっぱり訳が分からない気持ち悪い映画だが、次第に輪郭がはっきりして鮮烈なラストへ向かう過程がスクリーンから身体的に伝わってきたから。

冒頭、バスから娘が降りてきて、予約していたリムジンに乗る。娘のアガサはミア・ワシコウスカが演じているが、これがスッピンで全く美しくないうえに、首筋に大きな焼け跡が残っている。彼女を迎えるのはクローネンバーグの前作『コズモポリス』で主人公を演じていたロバート・パティンソンだが、こちらも俳優志望で脚本を書いているなどと言って怪しげだ。

一方、ジュリアン・ムーア演じるハバナ・セグランは、落ち目になったベテラン女優。スター女優で謎の死を遂げた母の幻影に悩まされながら、何とか役を掴もうとする痛々しい日々。彼女が通うセラピストを演じるのがジョン・キューザックで実に怪しげ。おまけに息子は子役のアイドル。

みんなハリウッドという虚構に生きる人々だが、ミワ・ワシコウスカがジュリアン・ムーアの秘書として雇われるあたりからバラバラに見えたこれらの人々が結びつき始める。そこから驚愕の真実が出てきて、強烈なラストに向かう。

何より実は体中ヤケド跡だらけのミワ・ワシコウスカと、チャンスを掴もうとあがくジュリアン・ムーアがすごい。ワシコウスカの前でトイレの戸を開けたムーアは、体調が悪いと言いながら、何と2度もおならをしてしまう。いや、びっくりした。

ムーアの亡くなった母を始めとして、亡霊が何人も出てくる。何とも気持ちが悪いけれど、みんなが夢を追うハリウッドの中では妙にリアルに見えてくる。そもそも登場人物たち自体が亡霊のようだし。

『コズモポリス』に続いて、クローネンバーグはまた新しい世界を切り開いてくれた。それにしてもアップリンクの2Fは不揃いのソファが並んでいて、シネコンとは正反対の無秩序さを醸し出している。それが今ではクールに見える。

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» 「マップ・トゥ・ザ・スターズ」 [ここなつ映画レビュー]
ヘビーでポップなクローネンバーグの狂想曲。ぐったりとするけど、映画的な快感は確かにある。いや、狂想曲というか、原罪と贖罪に血の源流を重ね合わせた中世ヨーロッパの寓話にも似ている。ハリウッド版のゴシック・ホラー。だがしかし、アガサの贖罪とは何だったのだろう?あれだけ繰り返されて出てきた贖罪の意味は?彼女の帰郷の当初の目的は?(結果については判ったけれど。)単純に言ってしまえば「過去に犯した罪を謝りたい」なのだろうけれど、そんな単純な話であるはずもない。と、思った瞬間にこの作品は私にとって腑に落ちないも... [続きを読む]

受信: 2015年3月 5日 (木) 13時02分

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