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2015年2月28日 (土)

北野武の新境地か:『龍三と七人の子分たち』

4月25日公開の北野武の新作『龍三と七人の子分たち』を見た。元ヤクザの爺さんたちがオレオレ詐欺に騙されそうになって、再び集まる話と聞いてワクワクして見に行った。結果はちょっと肩すかしだったが、それも含めておもしろかった。

北野武は時々梯子をはずす。静謐な『ソナチネ』(93)の後に『みんな~やってるか!』(95)を撮って、拍子抜けさせた。『座頭市』(03)でようやくヒット作を作ると、今度は『TAKESHI'S』に始まる困った三部作を作る。そして『アウトレイジ』(10)と『アウトレイジ ビヨンド』(12)という、興行成績が良く評価も高い連作を作った後が、この作品。

あえて劇的には作っていない。藤竜也を始めとして、近藤正臣、中尾彬など集まる8人の元ヤクザはみんな得意技を持ち、個性たっぷり。キャラが立ち過ぎていて、出てくるだけでおかしい。この8人が思い思いの「正装」をしてかつての親分の家に挨拶に行くシーンなど、本当におかしい。

彼らが集まって立ち向かうのは、暴走族上がりの詐欺集団「京浜連合」。オレオレ詐欺や羽根布団販売など今風の稼ぎ方で立派な自社ビルを持っている。元ヤクザ達が我慢できずに彼らを倒すのかと思ったら、正面衝突は何となく避けて、軽やかに収束してゆく。

登場人物はみなカリカチュアのようで、性格や行動がすべて顔に書いてある感じ。そしてそれぞれが小さなギャグを次々に飛ばす。「ドラマ」ではなく、「ネタ」が限りなく披露される感じ。北野武は刑事役だが、時々様子を見に出てくる感じで、バラエティ番組の司会のよう。

それでも元ヤクザたちが路線バスを乗っ取って、詐欺集団の車を追い回すシーンは見ていて爽快だ。場外市場の狭い通りを、大きなバスが周囲を壊しながら突き進む快感はやはり映画ならでは。

どこか違うなと思いながらも、最後まで全く退屈せずに見た。この表層的な軽さが北野武の新境地なのかもしれない。どこか21世紀らしいというか。やはりこの監督からは目が離せない。私の予想だと、批評家の評価はいま一つだが、興行的にはかなり行くのではないか。若い人達にウケそうな気がする。時期的にカンヌにも出るだろうし。

個人的には、近藤正臣の老けぶりに心が動いた。かつて『柔道一直線』で、長髪をかき上げて足でピアノを弾いていた究極のキザの姿を知っている世代には実に感慨深い。

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投稿: くま | 2015年3月 5日 (木) 14時16分

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