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2015年3月27日 (金)

『ブラックハット』の現代性

現代社会の問題は多いけれど、本質的なものとしては食糧とか資源とか原発を含むエネルギーとかがあるだろう。そしてその基礎には、コンピューター制御のサイバーシステムがある。5月8日公開のマイケル・マン監督の新作『ブラックハット』はそれらすべてを題材とする。

冒頭、香港の原発が爆発してぎょっとする。原発のコンピューターがハッカーによって乗っ取られ、冷却システムが破壊されたという結論が出る。その直後にシカゴの大豆取引所では先物取引価格が急騰する。これまたハッキングによることが判明する。

この2つの犯罪に共通性を見たFBIのバレット(ヴィオラ・デイヴィス)は中国との共同捜査を提案した。香港から派遣されたチェン・ダーウェイ(ワン・リーホン)は、刑務所にいるハッカーのハサウェイ(クリム・ヘムズワーズ)を釈放して捜査に加わるよう要求する。

この男2人にダーウェイの妹リエン(タン・ウェイ)が加わって、コンピューターを駆使した捜査は進展してゆく。実は主犯はインドネシアのジャカルタにいて、彼らはマレーシアのペラという砂漠をねらっていた。

香港、シカゴ、ニューヨーク、ジャカルタ、ペラと話は飛んでゆき、中国人の兄妹とアメリカ人ハッカーに加えてバレットともう一人のFBIの4人が活躍。アジアの話といえば日本が必ず出てくると思うくせがあるが、全く影もない。中心は中国人でその意味でも現代的だ。

チェン兄妹はどこか近親相姦的だし、兄とハサウェーはアメリカのMITの同級生というけれどホモセクシャルなものを感じさせるし、妹とハサウェーは会った瞬間から惹かれあう。その3人のむんむんするような濃密な関係を、黒人のバレットがすべてを達観したように見守る。

マン監督はサイバー空間を駆け巡る様子を巧みに映像化しているが、結局のところは人間ドラマとアクションにしないと映画にならない。だから中盤からは恋愛映画、アクション映画として予想外の展開を遂げてゆく。1時間半ほどたって訪れる急転には、ぞくっとした。

終わってしまうと、個人的には思いのほかまとまりが良いというか、普通の犯罪だったと思った。けれど手持ちカメラを中心に、主人公たちの息切れまで捉えるように見る者の視聴覚神経を刺激し続ける演出には最後まで乗せられた。ハサウェーを演じるクリム・ヘムズワースの分厚い肉体の存在感は、最初はサイバー空間に似合わないと思ったけれど、終わりの方になるとピッタリだと気付く。

ふだん平気でコンピューター上で送金などをしているけれど、この映画を見たら怖くてできなくなってしまう。そんなことも含めて現代的な映画だった。

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