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2015年3月15日 (日)

おもしろすぎる『ソロモンの偽証』

劇場で成島出監督『ソロモンの偽証 前篇・事件』を見た。最近のはやりで、最初から一月ほど時期を空けての前・後篇公開というのが、どうも嫌だったので試写を遠慮していた。しかし映画評を見ていると、評判が良さそうだ。そのうえ、来週早々松竹に打ち合わせに行くので、話題作りもあるかと思った。

最初は見ていて、作り過ぎだと思った。大人たちは教師も親も警察もテレビ局も誇張されていてカリカチュアみたいだし、子供たちもここまではやらないよなと思いながら見ていた。

ところが、後半に子供たちに主導権が移ってから、どんどんおもしろくなる。子供たちがアップで自己主張をするシーンの手持ちのカメラに動かされ、時おりはいる暴力的なシーンも効果的でだんだん盛り上がってくる。そうして終わりまで見たら、すぐにでも後篇が見たくなった。そのうえに、コテコテの予告編がくっついていて、やられてしまった。2時間1分、退屈しないどころかおもしろすぎである。

物語は、中学2年生の男子生徒が謎の転落死を遂げ、その真相を巡って学校全体が揺れて社会問題となるが、生徒たちが自分たちで真実を探ろうと動き出すというもの。警察は自殺と断定するが、告発状が届いてマスコミの報道が過熱し、父兄も生徒も騒ぎ出す。

この監督は『八日目の蝉』で完全に打ちのめされたが、その後はまあまあの作品が続いている。今回は『八日目の蝉』と同じくらい脚本がしっかりしているけれど、演出に作りもの感が強い。効果を計算して次々に小技を繰り出しているというか。

それらの「計算」を越えて素晴らしいのは、生徒たちの生々しい演技。主人公を演じる藤野涼子(役名と同名)はデビュー作とは思えないくらい堂々としているし、告発状を作る生徒役の石井杏奈がニキビに悩む姿は本当にリアルだ。その女友達の松子を演じる富田望生も、映画初出演とはとても思えない。

33人の14歳の生徒役の中には演技経験者もいるが、それが全く区別がつかないほど、みんな自分の身の丈で演じている。こういう学園ものは3歳も5歳も年上の俳優が演じることが多いが、この33人は藤野涼子が実際に14歳なのを始めとして、ほぼ同年齢で設定に近いことも大きいだろう。彼等の渦から異様な迫力が伝わってくる。

それに比べて大人たちは、小日向文世、夏川結衣、永作博美、黒木華、尾野真千子、松重豊、田畑智子、嶋田久作、余貴美子、市川実和子といった芸達者をずらりと揃えながらも、印象は薄い。多くが「おろおろする大人」を絵に描いたように演じているから。

本当ならばこれは2時間半くらいで1本で仕上げていたら、繰り返しや誇張が少なくてすんだのにという気がしないでもない。しかしこう作ってしまった以上、後篇はすぐにでも見たい。

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