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2015年3月 7日 (土)

何とも貴重なグエルチーノ展

まさか日本でこんなものが見られるとは思わなかった。国立西洋美術館で始まった「グエルチーノ展」のことだ。同じ17世紀絵画でも、フェルメールやベラスケスやレンブラントなどに比べて知名度は圧倒的に低い。

私も名前は知っていたが、もちろんまとまって見たことはない。なぜなら作品の多くがチェントやボローニャといったイタリアの地方都市にあるから。今回の展覧会は、チェント市立美術館が2012年の地震で被害を受けて閉鎖されたことから、その支援の形で日本で公開が決まったようだ。

作品はチェントやボローニャのみならず、ローマやフィレンツェからも出品されており全体で44点だが、大作が多いのに驚く。高さ2メートルを越す絵画がガラスなしで何点も展示してある。

すごいのは大きさだけではない。その描く世界がダイナミックで広大である。もちろん大半が聖書関連がテーマだが、これぞバロックという感じで劇的な世界を盛り上げている。

一番大きいのは、初期の《キリストから鍵を受け取る聖ペテロ》(1918)で、高さは378㎝と4メートル近い。キリストがペテロに金と銀の鍵を渡し、それを2人の天使が見守っている。その上をきらびやかな赤紫色の緞帳を持って飛ぶ2人の天使。ペテロの後ろで囁く2人の女。彼らがまとう鮮やかさ服も青い空や白い雲も動きに満ちていて、全体がダイナミックな世界を構築している。たぶん実物大ではないか。

一番有名な作品は、ゲーテが『イタリア紀行』で触れた《聖母のもとに現れる復活したキリスト》(1628-30)のようだ。「母を眺めている哀愁を帯びた眼差しは独自のものであって、あたかも自分や母のうけた苦悩の思いが復活によって直ちに消し去られることなく、高潔な魂の前に漂っているごとくである」

高さは260㎝の絵で、これもほぼ実物大。青や紫や黄の衣装や布がボリュームたっぷりに描かれていて、上にはキリストの持つ白い旗や黄色のカーテンがはためく。壁は黒っぽいが、画面全体から明るさのようなものが伝わってくる。

後期の絵はどんどん明るくなる。構図も安定していささか俗っぽい感じも出てくるが、ドラマチックな要素は健在。わずか40点強の展示だが、イタリア・バロックの精髄を見るよう。これだけまとまった個展は日本には2度と来ないだろうから、何とも貴重な必見の展覧会である。西洋文化の根源の一つがたっぷり見られる。5月31日まで。

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