「東宝スタジオ展」から「岡崎京子展」へ世田谷を歩く
もともと世田谷は嫌いだし、東宝とはなぜか相性が悪い。だから世田谷美術館で「東宝スタジオ展 映画=創造の現場」が開かれていると聞いた時は、どうしようかと考えた。しかしやはり見るのは仕事だろうと考えて足を運んだ。
思った以上に力業の展覧会だった。エントランスのホールにはゴジラと東京の街の巨大な模型がある。出だしは1954年の『七人の侍』と『ゴジラ』を大きく取り上げている。確かにこの2本は映画史でも画期的な意味を持つ。絵コンテや模型、ポスター等々。黒澤の三船敏郎への自筆の追悼文など見ていて飽きない。
それから1932年の東宝の前身の一つPCLから始まって、山中貞雄が大きく取り上げられる。『人情紙風船』の美術デザインに、山中への召集令状や中国からの手紙や死亡証明書まで、オリジナルの資料が並ぶ。これだけ山中にこだわりながら、その映像を全く見せないのは、どういうわけだろう。
そして戦後。たくさんのポスターに混じって、久保一雄、中古智、松山崇、村木与四郎、村木忍、阿久根巌、植田寛らの映画美術のデッサンの数々。あるいは美術考証の江崎孝坪や衣装デザインの柳生悦子のデッサン。それから特撮美術の井上泰幸の緻密なデッサン。もちろん黒澤の絵コンテもあるし、おもしろかったのは稲垣浩のスケッチ。原節子らのスターを描いたものまであった。
それにしても、どこか物足りないなどと思っていたら、最近のポスターがたくさん貼ってある部屋で終わった。おもしろかったが、いっこうに撮影所を見たという感じがしない。もちろん撮影所はセットを作っては壊すのだから、展覧会でそれを見せるのが難しいのは十分にわかっているが。もっと作品数を絞って徹底的に見せた方が良かったような気もした。
貴重な展示物が多かったので、展示リストをもらおうとしたら、今回はないとのこと。そこで2500円のカタログを買ったが、こちらにも展示物はほんの一部しか載っていない。黒澤の弔辞や山中の手紙が読みたいし、稲垣の俳優のデッサンが見たいのに、ない。その分、作品写真を1頁大で大量に載せている。せめて巻末に出品リストがあるかと見たが、これもない。これは欠陥商品ではないか。
その後、ちょうど来たバスに乗って、世田谷文学館で「岡崎京子展」を見た。こちらは平日の昼間なのに若い女性でいっぱい。展示も壁のあちこちに彼女の漫画や原画が大きく引き伸ばされていたり、漫画の一言が大きく書かれていたり、なかなか挑発的。展示室は「東宝スタジオ展」の半分もないが、その分濃密な空間がある。
私はもともと岡崎京子に興味はないし、彼女の描く東京の女の子像はどこか苦手だ。私が世田谷を嫌いなのとどこかつながっている気がする。
「東宝スタジオ展」は4月19日まで、「岡崎京子展」は3月31日まで。
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