« 「教育のアベノミクス」をめぐって:その(1) | トップページ | 何とも貴重なグエルチーノ展 »

2015年3月 6日 (金)

『イマジン』から聞こえてくる音

先日見た4月公開の『ザ・トライブ』は、聴覚や発話の不自由な人々を主人公にした映画だったが、同じ4月公開の『イマジン』は、何と目の見えない人達を描く映画だった。この2本で映画の基本をなす目と耳を奪われた人々を見ているうちに、映画の新しい地平が見えてきた感じがした。

私が『イマジン』を見に行ったのは、実は単に主演のアレクサンドラ・マリア・ララがお気に入りだから。『ヒトラー 最後の12日間』の秘書役を演じた女優でドイツ映画にはよく出ているが、最近だと『ラッシュ/プライドと友情』にも出ていた。

この映画の監督はポーランドのアンジェイ・ヤキモフスキだが、映画の舞台はポルトガルのリスボン。そこにある視覚障碍者のための診療所に欧州各地から集まった患者たちの物語。そこにやってくるのは英国人のイアンで、彼は舌と指を鳴らしてその反響音で障害物を知る「反響定位」という方法で、杖を使わずに外を歩くやり方を患者たちに教えてゆく。

映画が始まると、物音に意識が集まる。目が見えなかったら、どう聞こえるだろうと考える。主人公のイアンが最初に施設の外に出る瞬間の眩さと音の氾濫といったら。そしてイアンは部屋に閉じこもっていたエヴァ(アレクサンドラ・マリア・ララ)と街を歩きだす。杖なしで街を歩く方法を教えるイアン。カフェでコーヒーを注文し、海や船の音がするという。

あるいは、イアンに水差しからコップに水をこぼさずに注ぐコツを学ぶ生徒たち。彼らは必死でイアンを真似ようとするが、イアンの試みはなかなかうまくは進まない。イアンにならってエヴァと街に出るセラーノだが。

たえず耳を澄ましながら見る映画だ。時おり目をつぶってみたりする。そこに広がるのは、リスボンの夏の日差しと海の匂いと市内電車の音。たいしたことは起こらないのに、最後まで張りつめた気分で見てしまった。『ザ・トライブ』と同様に、音と映像の新しい体験に誘う映画である。

この2本で、新聞の夕刊1面か朝刊社会面がバッチリできる気がするけど、記者のみなさんいかがですか?単なる映画評じゃもったいない題材なので。

|

« 「教育のアベノミクス」をめぐって:その(1) | トップページ | 何とも貴重なグエルチーノ展 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/61234551

この記事へのトラックバック一覧です: 『イマジン』から聞こえてくる音:

« 「教育のアベノミクス」をめぐって:その(1) | トップページ | 何とも貴重なグエルチーノ展 »