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2015年3月 3日 (火)

ホイッスラーにおける唯美主義とジャポニスム

既にこの日曜で終わった美術展で恐縮だが、横浜美術館の「ホイッスラー展」について書き留めておきたい。この美術館は私が住む場所からはかなり遠いが、時々どうしても見たくなる展覧会をやっている。今回のホイッスラー展もその一つだった。

最近はルーヴル展やワシントン・ナショナル・ギャラリー展などの「〇〇美術館展」がまた増えているが、こうした個展はありがたい。日本にいながらにして世界各地から集まった同じ画家の絵を見られるから。今回もイギリスを中心に、パリのオルセー美術館やニューヨークのメトロポリタン美術館などからも出ている。小さな作品や版画も含めて120余点。

個人的にはジェームズ・マクニール・ホイッスラーの個展を見るのは初めて。日本では27年前に開催されたらしいけれど。アメリカ人画家で印象派やジャポニスムに影響を受けた、くらいの知識しかなかった。しかし今回見てみると、印象派の影響よりも、少し前のクールベらのリアリスムがその原点にあるようだ。

それから港や橋や海を描く風景画が出てくる。中には明らかに浮世絵の構図を真似したものがある。《ノクターン:青と金色-オールド・バターシー・ブリッジ》(1872-75)は、まるで日本橋を描いた広重のよう。その夜の風景が妙に象徴的でいい。さらには『青と銀色のノクターン』(72-78)に至っては、ほとんど真っ黒で影絵の世界。印象派を通り越してシュルレアリスムを思わせる。

英国の唯美主義に影響を受けた女性像がいい。ブロンドの長い髪で白いドレスを着た女たち。構図もどこか日本風のうえに、団扇を持っていたり、日本風の花瓶があったりする。ここにきて、ジャポニスムと唯美主義が融合して、えも言われぬ退廃的な美の世界を作っている。ポスターにもなっている《白のシンフォニーNo.3》の官能性といったら。

本人の写真もあったが、とてつもなくお洒落でキザに見える。当時ボードレールなどが憧れた英国のダンディそのものではないか。そんな生活を送りながら、美しいものだけを追い求めたのだろう。彼の絵には、時々蝶の形のJWというサインがある。そのデザインがまた何とも日本風。

最近も江戸末期の日本の着物の型紙が大量にドイツの博物館で見つかったニュースがあったが、19世紀後半の美術におけるジャポニスムというものの広がりは、とてつもなく大きなものだったと痛感する。今のアニメやオタクどころではない。

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