久々のグルメ映画:『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』
意外なことだが、本当に料理がおいしく見える映画は多くない。最近だと『マダム・マロリーと魔法のスパイス』はまさに料理人を主人公にした映画なのに、なぜか料理そのものがくわしく語られない。料理の官能性に頼ると演出が鈍るかのように、映画監督は料理の描写を避ける傾向がある。
そんな中で料理がおいしそうに見えたのが、公開中の『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』。『アイアンマン』シリーズの監督、ジョン・ファヴローの監督・脚本・主演作だが、これが何とインディーズのような即興的な感じを出している。
彼が演じるロスの人気シェフ・キャスパーは、観客に媚びる料理を強要するオーナー(ダスティン・ホフマン!)と対立し、SNSで失敗して息子を連れて元妻の故郷のマイアミに行く。こう書くとありきたりだが、冒頭からクレジットもなしでレストランの準備のシーンをどんどん見せて引っ張ってゆく。
キャスパーは元妻の元夫(ロバート・ダウニ―・Jr)の助けを借りて、フードトラックでキューバ・サンドイッチを売り始める。するとこれが成功してマイアミからロスへと向かうという展開。
最初は図式通りのシェフとオーナーの喧嘩に加えて孤独な息子の登場にお定まり感ありありだが、ファヴローが真剣に料理する姿が何ともリアル。息子の朝食まできちんとクロック・ムッシューを作り、朝から食材を探しに出かけ、新しい料理を研究する様子を細かく見せる。
そしてマイアミに行ってフードトラックを息子と改装するあたりから、解放感が溢れてゆく。そのうえ、かつての片腕の男(ジョン・レグザイモ)まで合流して、キューバ・サンドイッチは売れに売れる。それから向かったニューオリンズのカフェで息子と食べるベニエのうまそうなこと。あるいはその後のテキサスで、一日かけて焼いた巨大なバーベキュー肉には、本当に唾が出てきた。
前半のグルメ・フレンチ料理もおいしそうだが、後半のアメリカ式B級グルメの旅がもっといい。ファヴローを始めとしてダスティン・ホフマンらのスター陣も何だか楽しそうだ。スカーレット・ヨハンソンが途中で消えてしまったり、ヘンな警官の出番が長過ぎたりと、ドラマとしては難があるが、それも含めての即興的なノリが楽しめる。
その証拠に115分はあっというまだし、それ以上に本格的なローストポークを挟んだキューバ・サンドイッチを始めとするB級料理を作ってみたくなる。料理は本当はシンプルなものがおいしいと、昨日書いた祇園の店を考えながら思った。
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