« 意外におもしろいデンマーク製西部劇 | トップページ | 『ブラックハット』の現代性 »

2015年3月26日 (木)

卒業式に歯が痛むとは

昨日は卒業式だった。教師にとっては毎年のことで、小津の映画『小早川家の秋』のラストで火葬場に上がる煙を見ながら、笠智衆が「人間は死んでも、せんぐりせんぐり後から生まれてくる」と言う場面を思い出す。学生は4年たつと去ってゆき、2週間後に新入生が目を輝かせてやってくる。

ところが、今年はそういう無常観に浸る余裕がなかった。何と歯が痛かった。歯というよりは歯茎の奥がひどく痛み、左頬は宍戸錠のように腫れていた。

実は前日に少し腫れていた。ちょっと奥歯が痛んだ。近所の小さな歯科に出かけると、「軽い抗生物質を出しますので、様子を見ましょう」と言う。酒は飲んでもかまわないと言うから、約束していた友人と「この冬最後のおでん」を楽しみながら日本酒を飲んだ。

ところが朝起きると頬がパンパン。卒業式なのに、恥ずかしい。マスクをすれば隠れるし、左頬に手を当てればわからないが、まさか記念写真撮影でマスクをしたり、「考える人」のポーズを取るわけにもいかない。卒業証書(最近では「学位記」という)は主任が全員に渡すが、私が渡す「賞」もある。

「賞」というのは私が卒業した大学にはなかったが、私の勤務する大学では学科ごとに卒業制作や卒業論文の優秀者に対して賞がたくさんある。私の教える理論系は学生が少ないこともあって、1/3近くが何かの賞をもらえるのでは。

そのうちの一つを渡すと思うと気が重かった。座って待つ時は「考える人」でもいいが、賞状は両手で渡す。意を決して大学に行って助手を見たが、何も言わない。こちらから言うと「そう言えばそうですね」とクール。人のことなど誰も気にしてはいない。

無事に賞状を渡したが、卒業証書と賞の1時間半の授与式が長かった。とにかく痛い。学生や父兄から見て前方の席に座っているので、あまりヘンな行動はできないし。「考える人」をしたりやめたりしているうちに終わり、教え子たちと記念撮影。私は時おり頬をさすっていたが、誰も気にしてくれない。

それから、友人に勧められて朝のうちに予約していたより大きな歯科に行った。そこで30年前に入れた差し歯をガリガリやられて、薬を2種類もらった。「お酒は1週間ほどはやめてください」とも言われた。もちろん夕方の学内のパーティも夜の謝恩会も欠席。

私がいなくても、世の中は回る。新たな「無常観」を学んだ。今朝は薬のおかげでだいぶいい。問題は明日以降来週にかけて目白押しの飲み会をどうするか。送別会のような「義務」は酒を飲まずに参加し、それ以外は欠席か。みなさんご理解のほど。

|

« 意外におもしろいデンマーク製西部劇 | トップページ | 『ブラックハット』の現代性 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/61339121

この記事へのトラックバック一覧です: 卒業式に歯が痛むとは:

« 意外におもしろいデンマーク製西部劇 | トップページ | 『ブラックハット』の現代性 »