川村元気の仕事本
大学の教師にとって一番難しいのは、授業でも研究でもない。学生の就職である。私のように会社員22年の経験があればラクだろうと思われるが、これがかえっていけない。いわゆる「成功体験」をもとにした話をしてしまう。これでは学生は引いてしまう。
そこで客観的な見方を求めて本を読む。最近手に取ったのは川村元気氏のインタビュー本『仕事。』。若手映画プロデューサーとして著名な川村氏が、秋元康や坂本龍一ら人生の先輩に話を聞くという内容。
こう書くと、30代半ばの若手業界人がもっと有名になりたくて業界セレブに話を聞いた本のように見えるかもしれない。私もそういう偏見を抱いていたが、これが本音がポロリと出ていておもしろい。
沢木耕太郎「35歳までは世間的に新しいものであることが僕の仕事の絶対的な基準だったけど、それ以降はほとんど唯一、手を抜かないってルールだけでずっとやってきた」
川村「いまだに1年に1度はバックパッカーとして旅に出る」
杉本博司「30代前半までに人生やることがみつからなかったら、人生やることないよ」「アーティストは聖職者みたいなイメージがあるけど、僕はある意味、いちばん汚れた職業であってもいいと思ってる」
倉本聡「誰かから、世間から抜きん出るには、やっぱりどこかで無理をしないといけない」「僕は今でもフジテレビのヤングシナリオ大賞なんかに名前を変えて応募しようかという気持ちを時々もちますね」
秋元康「人の嫉妬はエネルギーになるんだ。もしそれが好物になっていないなら、まだ若いよ」
宮崎駿「(映画は)最後まで見ないで出てくることが少なくないんです。テレビもまったく見ません」「どうしてですか」「だいたい物を見る能力が落ちてきてますから、何でも自分の肉眼で見る時間を取っておいたほうがいい。…作品を見ることと、物を見ることは違うんです」
篠山紀信「今日は川村さんに僕の昔話をするわけ?意味がないと思うよ。だって40歳くらい違うでしょ。時代が違うもん」
坂本龍一「勉強することは過去を知ることで、過去の真似をしないため、自分の独自なものをつくりたいから勉強するんですよ」
気になった言葉を引用していたら長くなった。気がついたら、自分がフムフムと頷いている。とりあえず大学生用としては、最後の坂本氏の言葉は使えそう。
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