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2015年4月13日 (月)

『画家モリゾ』の見どころ

かつてベルト・モリゾという印象派の女性画家について、長めの文章を書いたことがあった。それ以来、この画家のことはいつも気になっていて、彼女の絵が展示されている美術展は必ず見に行った。今度、彼女の生涯が映画になったと聞いて、試写を見に行った。

6月14日公開の『画家モリゾ、マネの描いた美女~名画に隠された秘密』という長いタイトルで、監督は何とカロリーヌ・シャンプティエというから、見ないわけにはいかない。彼女は、ゴダールやリヴェットやカラックスらフランスの天才監督たちの撮影監督として有名だから。

ところが彼女自身の監督作品は極めてオーソドックスだった。映画は1865年のパリから始まる。「サロン」展に出品されたモネの《オランピア》がスキャンダルを巻き起こし、それをモリゾが見に行く場面だ。彼女も姉も画家を目指していたが、20代後半で親からは結婚を急がされていた。

彼女たちはルーヴル美術館でマネに出会い、マネはモリゾにモデルを頼む。そこから有名な《バルコニー》などが生まれた。マネに憧れた姉は別の男性と結婚し、モリゾはマネに惹かれながらも、その影響を受けまいと悩む。そし普仏戦争が起き、1974年に第1回印象派展が開かれる。

いわば、「印象派誕生の瞬間」を描いたわかりやすい映画だ。仕事と結婚の間で悩む30歳前後の女性の姿も、極めて現代的なテーマ。もともとはテレビ用に作られた映画だから、音楽もふんだんで実に見やすい。しかしながらさすがにシャンプティエで、画家たちや絵画の間を静かに移動してゆく流麗なカメラにはうっとりするし、何よりも主人公モリゾの苦悩が克明に描かれている。

美術ファンには、モリゾの師匠だったコローが彼女のアトリエを作る時にアドバイスをしたり、マネがファンタン=ラトゥールを伴ってモリゾの家を訪ねてきたり、マネの家に《笛を吹く少年》のモデルの少年がいたりと、お楽しみがあちこちにある。画商のデュラン=リュエルの活躍もきちんと描かれている。

モリゾのファンとしては、第一回印象派展以降に本格的に開花する画家モリゾの世界を見たかった。しかしこの映画が目指したのは、「印象派誕生秘話」としての女性画家モリゾの苦悩の時代の描写なので、そこまで求めるのは無理がある。シャンプティエには、次回はもっともっと自由な映画を監督として撮って欲しい。

そういえば、映画『ターナー』も同じ頃に公開される。こちらはマイク・リーの自由闊達な演出だが、19世紀前半のロンドンと後半のパリの美術界が同時に見られるのは、美術ファンにはたまらない。

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