道に倒れても、試写を見る
まだ歯痛は続いているが、今度は別の災難が訪れた。何と、道で倒れて手足や顔を怪我してしまった。東銀座駅で降りて階段を登ると青信号が見えたので、そこで一気に駆け出した。そこで体が一瞬宙に浮いたかと思うと、前のめりに倒れていた。
4、5人が「大丈夫ですか」と近づいてきた。「いや、かすり傷ですから」と笑ってスタスタと歩き出したが、手も足も顔も痛い。松竹に着いたが、私が最初に取った行動は、何と3階試写室の座席の確保だった。その後に1階奥のトイレに行った。顔は大きく三か所が赤く腫れていて、右の小指の皮はずいぶん剝けて血が流れていた。
一応水で顔や手を洗ってハンカチで拭いた。それからコンビニに駆け込んでバンドエイドを買おうとしたら、店員さんが「お客さん、どうしたのですか?」と聞く。「いや、転んでしまって、えへへ」と笑うと、「私は薬剤師ですが、顔には今すぐに軟膏を塗った方がいいと思います」「じゃあ、それを買うので教えてください」
結局買った軟膏を、その親切な店員さんに塗ってもらった。そしてそこで買ったマスクで隠して試写会に戻った。考えてみたら病院に行った方がいいのではとも思ったが、骨折などした感じはない。そうこうしているうちに試写が始まった。痛くなったら途中で出ればいいさと思いながら、最後まで見てしまった。
遅くなったが、見た映画は5月16日公開の原田真人監督『駆け込み女と駆け出し男』。青信号に駈け出して転んだ男の私にはぴったりの題名だと余裕を見せていたが、前半はどうも手や頬が気になって集中できなかった。
映画は、江戸時代に駆け込み寺の東慶寺に集まってくる離婚希望の女たちと、その横の宿屋の女主人(樹木希林)や居候の見習い医者(大泉洋)らが織りなす人間模様をコミカルに描く。ちょうど昨年当たった『超高速!参勤交代』のように、時代劇をありえないような現代感覚とちょっとゆるい感じのユーモアで見せていて悪くない。
143分と長めだが、笑ったりホロリときたりしながら見ているうちに、見終わってしまった。何よりも、大泉洋のパフォーマンスが見ていて楽しめる。樹木希林、満島ひかる、戸田恵梨香、山崎努(曲亭馬琴!)、堤真一らとのカラミも何ともおかしい。
意外に当たるのではないかなどと思ったが、見終わるとそんな心配よりも、自分の怪我のことに考えが戻った。風邪はひくし、歯は痛くなり、道に転ぶ。左頬は歯痛で腫れ、右頬は傷で赤い。ただのガタのきた中年だとつくづく思う。少なくとも、これから先は走るのはやめよう。いろんな意味で。
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