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2015年4月 5日 (日)

『コングレス未来学会議』が見せる未来

イスラエルのアリ・フォルマン監督は、アニメとドキュメンタリーを合わせた『戦場でワルツを』(2008)に度肝を抜かれたが、新作『コングレス未来学会議』が6月に公開というので試写を見た。今回も実写とアニメを合わせた作りだった。

冒頭に女優のロビン・ライトの泣く顔のアップが出てきて、彼女がマネジャーと話す様子が写る。彼女は本人役で出ていて、病気の息子と空港の近くで暮らしている。そこにハリウッド・メジャーの「ミラマウント」から、容姿をスキャンしてデジタルデータを今後自由に使いたいというオファーが来る。

息子を治療するためにその要望を受け入れた彼女は、20年後にミラマウント社の未来学会議を訪れる。そこはアニメ専用地域で、彼女はアニメに変身して現れる。そこで自分のデータが使われた映画を見たり、好きなスターに化けたアニメの人々を見る。それから革命が起こったり、恋人に出会ったりしながら、ロビンは子供を探す。

そんな内容だが、今回もかなりわかりにくい。見ていると妄想や夢なのかわからなくなるし、それ以上に20年後の世界に起こることがどうもつながってこない。それでもこの監督らしい惚れ惚れするシーンが一杯だ。まず、ハーヴェイ・カイテル演じるマネジャーが自分の生い立ちを語りながら、ロビンを自然に演技させるシーンが心に響く。そして息子とのやり取りも切ない。

未来のアニメの世界は実に官能的で今まで見たことのないものだし、あえて1930年代のフライシャー兄弟のアニメを模して作られていて、何とも懐かしい感じが漂う。『戦場でワルツを』のようなヘタウマではなく、今回は世界の最先端のアニメという感じか。

120分の長さのうち、主人公がアニメになった状態が真ん中に1時間ほど入る。終盤には再び人間に戻ったロビンが写る。スタニスワフ・レムの原作というが、後半に出てくる薬を使って脳内で好きな者に化けるというシステムがレムらしいかもしれない。そのうえ、その薬は「ミラマウント・ナガサキ」というから(原作の通りか)、妙に気になる。

現実と幻覚が混じり、アニメと実写が混じり、不可思議な世界が展開する。乗れるかどうかは人によるだろうが、アリ・フォルマンが前作に引き続いて驚異的な世界を作り出したのは間違いない。

考えてみたら、俳優を完全にデータとして蓄積し、あとはコンピューターの合成で映画を作り上げるというのは、十分に実現可能だろう。それをさらに突き進んでアニメと組わせて脳内の世界を見せたところが、この監督らしい。前作のような政治的主張は後ろに退いているが。

付記:ロビン・ライトの名前をロビン・フッドと書いていたのを、宣伝の方に指摘されて訂正した。(6/17)

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