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2015年4月 7日 (火)

「ダブル・インパクト」展のインパクト

上野の東京芸大美術館で5月17日まで開催の「ダブル・インパクト 明治ニッポンの美」展が、抜群におもしろかった。「ボストン美術館×東京藝術大学」と書かれているので、なんだ芸大で「ボストン美術館展」をやるのかと思ったら、これが大違い。

これは、両方の美術館のコレクションから、江戸末期から明治期に日本で作られた美術や写真を集めて比較するというもの。つまり日本人が集めたものとアメリカ人が集めたものを比べながら見るという何とも斬新な企画だった。

それもそこらの美術館とはわけが違う。芸大は、1887年に日本で初めてできた官立の東京美術学校で、教えたり学んだりした美術作家たちの膨大なコレクションを持つ。一方、1876年にできたボストンは、日本に美術を教えに来たフェノロサやボストンに渡った岡倉天心が集めた10万点の日本美術を持つ。

3年前に東京国立博物館で開かれた「ボストン美術館 日本美術の至宝」では、12世紀の絵巻物から若冲や蕭白など江戸時代までだった。今回はその後の明治美術が中心。

「ダブル・インパクト」にはいくつかの意味があるだろう。一番は黒船の到来以降に西洋文明が与えたインパクト。その次は来日した西洋人が日本の文化に驚いたインパクト。日本の画家は西洋美術の真似をし、西洋人はできるだけ日本的なものを探して買い集めた。

もうひとつの層としては、この2つのコレクションが混じりあうことのインパクトがあるだろう。新しい美術を目指してもがいた日本人美術家たちの軌跡と、西洋人が見た日本美術とが一緒に並ぶことで、新たな明治の美術像が浮かび上がる。

ボストンが持っている幕末や明治初期の絵は、「横浜浮世絵」など派手なものが多く、文人画は少ない。あるいは写真や工芸品が多い。これが明らかに家に飾るかプレゼント用だろう。1876年のフィラデルフィア万博に出品された時に購入されたものもあるようだ。あるいは河鍋暁斎らのド派手な絵。

これに対して芸大所蔵の高橋由一や五姓田義松、浅井忠らの黎明期の洋画を見ていると、その悲愴な努力に何だか悲しくなる。狩野芳崖の《悲母観音》も、この文脈で見ると日本画の変貌の軌跡が見えてきて胸が詰まってきた。

そのほかまだまだ書くことがあるので、後日また。キャプションにボストン蔵は「B」、芸大蔵は「藝」のマークが大きく書かれているので、実に見やすい。本展は、これまで私がよく批判してきた「○○美術館」展に対する強烈なアンチテーゼであることは間違いない。

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