ささいな話:その(2)
前に書いた「ささいな話」が意外と好評だった。わざわざ研究室に「いいですよ」と言いに来た学生までいた。友人からメールも来た。というわけで、調子に乗って続編を書いてみる。最近一番嫌いなのは、サラリーマンの群れだ。
地下鉄通路や車内で場所をふさぎ、大声で話す会社員の群れを見ると不快になる。みんなグレーの上下を着て白いシャツで黒のバッグを持ち、似たような髪型と顔をして、「課長がね」といつもの話をする。飲み屋で「カンパーイ」なんてやっているのを見ると、すぐに店を出たくなる。
もちろん、かつて自分がそうだったから嫌いなのだと思う。思い出したくない過去をほじくり返される気分か。ある時、居酒屋で学生数名と飲んでいたら、大騒ぎしているサラリーマン集団がいた。「おまえたち、あんなバカリーマンになるなよ」と言ったら、学生に「先生、ダメですよ。聞こえたらどうするのですか」と諭された。
今の若者は、こういうところでは大人である。他人を傷つけないことにかけては、驚異的なほどに感性を張り巡らせている。私はそうして注意されるとエスカレートする傾向がある。特に飲んでいると手が付けられない。
飲んだうえでの失敗は数知れない。いろいろあるけれど、一番覚えているのは会社員時代に忘年会で上司を罵倒したこと。景品付きのゲームがあって、何も当たらなかった上司に対して、「日頃から人望がないからこうなるんだ」と大きな声で言った。もちろんそれは異動の遠因となった。
酔って帰宅中に喧嘩沙汰になったことも何度もある。知らない人と殴り合いをするのだから、後で考えると意味がわからない。40を過ぎてからは給料も増えたし家も近くなったしで、できるだけタクシーに乗るようになった。
ところが、タクシーの運転手ともよく揉めた。酔っていると、遠回りをされているような気がする。最近は、本当に道を知らない運転手が増えたけれど。
酔っても絶対にしないのは、学生にからんだり、あるいは抱きついたりすること。これをやったら、上司を罵るどころではない。明日から路頭に迷う。大学の教師は「聖職者」だとは思わないが、これでも少しは仮面をかぶっているつもり。
今回は、前にも増してつまらない話を書いてしまった。
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